14日、ロンドンで記者会見するトラス英首相(AFP時事)
14日、ロンドンで記者会見するトラス英首相(AFP時事)

 【ロンドン時事】トラス英首相は14日、クワーテング財務相を更迭するとともに、金融市場の混乱の原因となっていた大型減税策を事実上撤回した。市場からノーを突き付けられ、与党からも圧力がかかった末に目玉政策を断念した形で、トラス政権は発足から1カ月余りで早くも正念場を迎えている。

英政権、大型減税策を撤回 財務相を更迭、後任に元外相―金融市場の動揺で

 ワシントンで開かれていた一連の国際会議に出席していたクワーテング財務相はこの日、急きょロンドンに呼び戻された。間もなく発表された首相宛ての書簡で、クワーテング氏は更迭を受け入れたことを明らかにした上で、「あなたと私の後任を議会の後方から支える。あなたの最初の財務相として仕えたことは名誉だった」と、最後まで長年の盟友をかばった。

 だが、トラス政権を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。与党保守党の議員は英BBC放送に対し、「(チェスの詰みの)チェックメイトだ。もうどうしようもない」と政策の行き詰まりを認めた。政策撤回の発表後も通貨ポンドは対ドルで下げ止まらず、市場の信認も回復の兆しが見えない。

 一方、野党労働党は「敵失」に攻勢を強めている。ある有力議員はBBCで「トラス首相は自身の政策を遂行した財務相を更迭した。今明らかなのは、政府がメルトダウンしているということだ」と批判した。最新の世論調査で、保守党の支持率は23%と、労働党の51%に大きく差をつけられている。

 トラス氏は財務相更迭を受けて開いた記者会見で、首相にとどまる理由を聞かれ、「成長率を引き上げ、英国をさらに豊かにするという約束をやり遂げる決意だ」と強気の姿勢を崩さなかったが、わずか8分で切り上げ会場を後にした。