- 胡前総書記、党大会閉幕式で付き添いに促され退席-習氏が合図
- 赤いファイル巡り栗氏と議論、困惑の様子-胡氏の情報は制限続く
中国共産党の最も重要な政治イベントである党大会は通常、最高指導部を礼賛するため注意深く組み立てられたシナリオに沿って進行する。だが、習近平総書記(国家主席)が権力固めを明示した党大会閉幕式で、話題をさらったのは胡錦濤前総書記の不可解な退席だった。
79歳の胡氏は退席の際に困惑した様子で、何があったのかを巡り臆測を呼んだ。退席から数時間後、胡氏は体調不良で休息が必要だったと、国営新華社通信がツイッターで説明。体調は今「ずっと良くなっている」と続けた。
「習氏は政治的な手続きと党の団結に長いこと強くこだわり続けてきた。胡氏の排除が計画されていた公算は小さく、健康問題が発生したか、習氏の最高指導部独占に胡氏が抗議を始めたかだろう」と、ユーラシア・グループの中国担当アナリスト、ニール・トーマス氏は指摘した。
退席劇を巡り、これまでに分かっているのは次の通りだ。
胡氏の健康は悪化していた
胡氏の健康問題は、チベット自治区の党委書記を務めていた1988年から92年にさかのぼる。チベットは高地にあり、心臓を患ったと未確認の情報が伝えられている。総書記引退後はいっそう健康が悪化した様子で、例えば昨年7月に北京の天安門広場で行われた共産党結党100周年の記念式典でも付き添いを必要とした。
党大会開幕式でも弱々しい様子
16日の共産党大会開幕式でも胡氏は弱々しい様子だった。習氏の後に続いて着席する際には付き添いが支えの手を差し伸べた。
席順
中国共産党大会は全てが厳密に前例に倣う。その一つに、党の団結を示すために現総書記の隣に以前の総書記が座るという席順がある。2017年の党大会では、習氏の両隣に胡氏と江沢民元総書記が着席した。10年前と15年前の党大会では、胡氏の隣には江氏がいた。
胡氏が弱々しい様子だったにもかかわらず習氏の隣の席に座っていたのは、それが理由である可能性がある。習氏は前任者らが設定した非公式の規則を破って最高指導部を自らの側近で固める方針であっただけに、長老らの承認を得ていると印象づけるためにも胡氏の存在は重要だった。
赤いファイル
チャンネル・ニュースアジア(CNA)が入手した胡氏が退席する瞬間を捉えた映像では、同氏の前に置かれた赤いファイルが目を引く。全国人民代表大会(全人代)常務委員会の栗戦書委員長は胡氏の手からファイルを取り上げ、手の届かないところに置こうとしているように見える。胡氏は困惑した様子で、ファイルを取り戻そうとした。
このファイルは何なのだろう。映像を拡大してみたところ、党大会関連の名簿のようだが、正確な内容は明らかでない。出席者は全員、似たような赤いファイルを持っている様子で、他の多くと同様に胡氏もファイルを開いていた。
退席
栗氏と胡氏がファイルについて話している傍らで、習氏は椅子をずらし、補助員を呼ぶようなしぐさをした。そのすぐ後で、胡氏は開幕式と同じ付き添いに導かれて退席した。付き添いは腕を持って退席を促したが、胡氏は退席を渋り、抵抗している様子だった。最終的に退席するに当たり、胡氏は習氏に何か言葉をかけ、李克強首相の肩をたたいた。
検閲
胡氏は2日間にわたりツイッターで話題となったが、中国の公式メディアやソーシャルメディアは退席について触れていない。ソーシャルメディアの微博(ウェイボ)ではこの退席があって以降、胡氏に関してアクセスできる投稿はごくわずかに限られ、コメントの書き込みは全く許されていない。27日午後の時点でも制限は依然かかっている。
胡氏を再び目にすることはあるのか
分からない。近く予定されている党の主要記念行事はなく、引退した長老らは時折ソーシャルメディアで動静が伝えられるものの、概して目立たずに過ごす傾向がある。退席を巡り騒ぎとなった胡氏は、当面の間は公に動向が報じられることはないとみられる。
原題:Hu’s Mysterious Exit From Xi’s Party Is Still Confounding China(抜粋)