[東京 31日 ロイター] – 日銀は31日、「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の全文を公表した。原材料高を受けた企業の価格転嫁について「競合先の値上げが広がるにつれて、コスト転嫁を進める先が非線形的に増加する関係性がうかがえる」と指摘した。ただ、最近の物価高で、新型コロナウイルス禍で抑え込まれてきた消費の回復時期や度合いには不確実性が高いと警戒感を示した。

日銀は27―28日の金融政策決定会合で展望リポートを議論し、2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しを前回の前年度比プラス2.3%からプラス2.9%に引き上げるなど、22年度から24年度までの予想数値をいずれも引き上げた。物価見通しのリスクは「上振れリスクの方が大きい」とした。

展望リポートでは、企業による原材料コスト上昇の販売価格への転嫁について「足元、強まりや広がりが見られている」と指摘した。

コロナ感染数の減少と全国旅行支援の開始で、個人消費はサービス消費を中心に回復が見込まれる。リポートでは「感染症下で控えられてきた旅行や外食などへの潜在的な需要は強いとみられ、政府による需要喚起策もこうした需要の顕在化を後押しする方向に作用する」とした。

ただ、最近の物価上昇も踏まえると「ペントアップ需要が顕在化する時期やその大きさを巡る不確実性が高い点には留意する必要がある」と指摘した。

輸出・生産については、当面は自動車や資本財を中心に増加基調をたどると見込まれるものの「海外経済に関する不確実性はきわめて高く、当面、日本の輸出・生産を巡るリスクは下方に厚い」との見方を示した。海外経済の減速が強まったり、持ち直し時期が大幅に遅れたりすることがあれば、現在は堅調な自動車や資本財の輸出が受注キャンセルを通じて急速に減少したり、一部でみられているIT関連財の調整が広範になることも考えられるとした。

(和田崇彦 編集:田中志保)