G20首脳会談を前にバイデン大統領と習近平総書記による首脳会談が実現した。冒頭、久しぶりに面談した両首脳が握手をかわし会談が始まった。習総書記が緊張しながらも穏やかな表情でバイデン大統領を迎えたのに対し、同大統領は満面に笑みを浮かべながら固い握手を交わしたのが印象的だった。バイデン氏は心から習氏に会いたかったのだろう。心の中の思いが顔にでる。正直な人だ。これで敵対者を情け容赦なく切り捨てる習氏に対抗できるのだろうか。素人ながら心配になる。それはそれとして会談後の記者会見で大統領は「(習氏は)直接的で率直だった」と表現している。3時間半に及んだ記者会見は有意義だったのだろう。ブルームバーグ(BB)は今回の首脳会談を「緊張緩和の方向で一致」と見出しを立てている。ウクライナ戦争に北朝鮮のミサイル発射、これに台湾問題が絡んでいる。厳しい会談だったことは間違いないが、一縷の望みが芽生えたのだろうか。

BBによると両首脳は「核戦争は決して起こしてはならない」という点で合意、「ウクライナでの核兵器の使用もしくは核使用の脅し」に反対することで一致した。これが緊張緩和の具体的事例だ。プーチンはこれを見てどう感じるのだろうか。台湾問題、新疆やチベット、香港での人権問題でも両首脳は「直接的で率直」な意見交換をしたようだ。合意に達しなくてもお互いに本音をぶつけ合うことに意義はある。会談が終わった後の記者会でバイデン氏は習氏に、「北朝鮮が7回目の核実験を行わないよう説得する義務が中国にはあると伝えた」ことを明らかにした。その上で「北朝鮮が核実験を再開した場合、米国は自国および同盟国の韓国や日本を防衛するために必要な措置を講じる」と習氏に伝えている。これは「中国にとってより不快なものになる可能性がある」とも付け加えた。

中国が北朝鮮を説得する能力があるか問われて「わからない」答えている。だがロイターによるとワシントンの戦略国際問題研究所の東アジア専門家、クリストファー・ジョンストン氏は、「これまでの経緯からすると、中国は自国の利益にならない行動を取る準備を米国が行っていると認識した場合、北朝鮮に自制を求める可能性が高いことが示されている」と指摘している。首脳会談のさりげないひと言が周到に準備されている様子を窺い知ることができる。首脳会談を終えてバイデン氏はブリンケン国務長官を中国に派遣すると表明した。昨年3月、同長官はアラスカで中国の楊外交担当と罵り合いに近い論争をしている。そのブリンケン氏を訪中させるのだから両国の緊張関係は確かに緩和に向かっているのだろう。その裏でロイターは米CIA長官がトルコ訪問、ロシア情報局トップと会談すると伝えている。何かが変わりそうな気がする。