日本でもコロナの第8次感染拡大が始まっている。第7次が収束してホッとしたのも束の間、新たな感染拡大の波が押し寄せようとしている。日本だけではない。世界中ですでに新しい感染の波が動き出している。こうした中、注目を集めているのが中国だ。ここにきて「ゼロコロナ」政策に対する反発が強まっている。先週末は中国各地で厳しすぎるコロナ規制に反対するデモが展開された。3期目に突入した習近平総書記の退陣要求も掲げられた。ロイターは「中国の厳格な『ゼロコロナ』政策を巡り中国全土に波及した異例の抗議活動によって、政治的不確実性の新たな波が引き起こされる可能性がある。だが、海外の投資家は28日、抗議活動によって中国の経済再開が早まるかも知れないとの期待を示した」と伝えた。市民の抗議活動に海外投資は期待しているというのだ。“異様な国・中国”を象徴するような記事だ。

ロイターによるとホンダやフォルクスワーゲンが28日、コロナの影響で「工場の稼働を取り止める」と発表した。アイフォンの主力工場である中国河南省鄭州工場では、「従業員2万人以上が離職」との情報もある。コロナの感染回避のためバブル工場で1カ月以上働かされた労働者が、耐え切れなくなって離職に踏み切っているというのだ。こんな状態の中で自然発生的に抗議デモが活発化している。中国はいま世界の工場だ。工場が止まれば、グローバル化した企業活動に大きな支障が出る。労働者や市民によるデモは海外の投資家から見れば、「経済再開の正当性を強化する」(海外運用会社のC I O)と受け止められる。これが契機となって「ゼロコロナ」政策が転換されるのではないか。労働者や市民の怒りとは別に、中国で工場を展開する企業や海外の投資家は「経済再開」に大きな期待を寄せる。

とはいえ、現時点では希望的観測に過ぎない。週末に全国各地で行われた抗議デモでは、「共産党退陣」「習近平退陣」といったシュプレヒコールが声だかに叫ばれたと伝えられている。正当な要求だ。国家主席に就任して10年、これまで直接的に退陣要求を突きつけられたことはなかったはずだ。香港ではデモの際、白紙の紙が掲げられた。白紙であるがゆえに言論を弾圧する中国当局に対する強烈な怒りが、どんなスローガンよりも雄弁に伝わってくる。果たして習近平に聞く耳はあるのか。強権政治を遂行する独裁者には小心者が多い気がする。3期目に入った総書記として社会的混乱は回避したいはずだ。政策転換への期待が大きくなる。だがブルームバーグは「当局が北京などの主要都市に警察を大量配備したことを受けて(デモは)沈静化に向かった」と報告している。強権統治は続く。ゼロコロナ解除は依然として見えない。