[東京 16日 ロイター] – 鈴木俊一財務相は16日、防衛費増強に伴う国債増発に関して「考えていない」と明確に否定した。自衛隊の施設整備に建設国債を充てる案についても「明確に決まっていない」と述べた。臨時閣議後に省内で記者団に語った。

鈴木財務相は閣議決定した防衛3文書のうち、新たな防衛力整備計画について「規模、内容ともにこれまでの水準とは次元が異なるもの」とし、「防衛関係費が社会保障関係費に次ぐ大きな規模となり、安全保障と財政の両面で歴史的な転換点になる」との認識を示した。

防衛財源として法人、所得、たばこの3税目を活用することに関しては「与党大綱で税制の具体的方向性を決定いただいた。今後の予算編成や国会審議などを通じ、防衛力強化の内容、規模、財源の3点について理解、納得を得られるよう、政府一丸となって丁寧な説明を尽くしていく」と語った。

法人に対する付加税では「中小企業に対する配慮もなされ、全体として付加税の対象となる法人数は全法人の約6%になる。賃上げは重要な政策課題で、企業の構造的な賃上げに取り組んでいく」とし、復興特別所得税の見直しでは「(所得税負担は求めないとする)首相発言との整合性は取れている」と指摘した。

東日本大震災からの復興財源は「引き続き責任をもってしっかり確保していく」との考えも併せて述べた。

岸田文雄首相が8日の政府与党政策懇談会で税目・方式・施行時期の検討を進めるよう指示があったことに回答できたかとの問いには、「提示されたと考えている」とした。

今後生じる防衛費増強に国債増発で対応するかは「新たに(必要となる防衛費の)伸びる部分については考えていない」と否定した。自衛隊施設整備に建設国債を充てる案についても「建設国債を防衛対象経費に充てるかは、まだ明確に決まっていない」と述べた。

その上で鈴木財務相は、2025年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化する政府目標について「財政規律を守ることは極めて重要。(防衛力増強に伴う)一定の影響はあるが、25年度のPB黒字化に向けて、しっかりと取り組みを進めていく」とした。

会見では、積み残しとなっている子ども予算倍増の財源についても言及し、「子ども政策を進めていくには安定財源が必要で、社会全体で幅広く検討する。財源を含めた検討を着実に進めていく」と述べた。