[東京 20日 ロイター] – 総務省が20日に発表した2022年12月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は104.1と、前年同月比4.0%上昇した。1981年12月以来の伸び率で日銀が目標とする2%の倍になった。ただ、市場ではピークは1月で、2月以降は政府の物価抑制策により伸び率は縮小に向かうとみられている。物価指標をもとに10年金利が再び日銀の上限を試す動きになる可能性は低いとの声が出ている。 

12月のコアCPIはロイターがまとめた民間予測、4.0%上昇に一致した。

エネルギー価格は15.2%上昇。前月の13.3%上昇から伸び率が拡大した。ガソリンは1.6%上昇。前年に下落した反動で前年比プラスに転じた。電気代は21.3%上昇となり、前月より伸び率が拡大した。電力各社が任意に設定できる自由料金の価格が上昇した。都市ガス代は33.3%上昇で1981年3月以来の伸び率。

生鮮食品を除く食料は7.4%上昇と前月の6.8%上昇を上回った。1976年8月以来の伸び率。10月以降の値上げの広がりが押し上げている。飼料価格高や鳥インフルエンザの影響で鶏卵は7.8%上昇した。コメ類は前年比プラスに転じ、1.4%上昇。2022年産が出回り始めたほか、生産コスト上昇が押し上げにつながった。

半面で宿泊料は18.8%下落。総務省は政府の「全国旅行支援」が、コアCPIを0.29%ポイント押し下げる要因となったと試算している。

コアCPIの対象522品目のうち、上昇が417品目、下落が58品目、変わらずが47品目。上昇品目数は前月の412品目を上回った。

12月の総合指数は前年同月比4.0%上昇し、1991年1月以来の伸び率。生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は3.0%上昇で、91年8月以来の伸び率。

2022年平均のコアCPIは前年比2.3%上昇で、2014年以来の伸び率となった。消費税率引き上げの影響を除くと1991年以来の伸び率。資源価格の高騰や歴史的な円安で、値上げが幅広く浸透した。

<コアCPI、ピークは1月か>

エコノミストは、コアCPIの前年比上昇率のピークは今年1月になるとみている。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは1月のコアCPIは4.3%程度の上昇になると予想している。

2月からは政府の経済対策が反映されることに加え、ガソリン価格抑制のための補助金の効果も継続。酒井氏は、一連の対策が当面のコア指数を1%以上引き下げるとみている。電力各社は4月からの電気料金の値上げを申請しているが「政府の総合経済対策が電力会社の値上げの影響を相殺する」という。

物価の先行きを占う上では、春闘が最大の焦点。UBS証券は、定期昇給含めて3.0%程度の賃上げになると予想する。同証券の栗原剛・次席エコノミストは「賃上げが強ければサービス価格を中心として物価が上昇していく可能性がある」と指摘。賃金(フルタイム労働者の所定内給与)が2%上昇した場合、サービス価格は1%ポイント押し上げられると推計している。

栗原氏は「賃上げが実現すれば、サービスインフレは23年度後半あたりから緩やかに強まっていくとみられるが、同時にその時期は財などのインフレが減速していく局面に当たる」と指摘。コアCPIの前年比上昇率は23年末に1.6%、24年末に1.0%程度になると予想している。

<債券市場「上限アタック」再来はないか>

12月のコアCPI4.0%は日銀が目標とする2%の倍。しかし、日銀にとっては想定内の数値で、黒田東彦日銀総裁は18日の会見で改めて「2%物価安定目標が持続的・安定的に達成できるという状況になっていない」と述べた。

日銀が18日に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では「消費者物価の前年比は現在2%を上回って推移しているが、来年度半ばにかけて2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと予想される」とされ、24年度になってもコアCPI、コアコアCPIともに2%に届かない姿が示された。

1月の金融政策決定会合にかけて、昨年12月の決定会合に続く政策修正への思惑から10年物金利は許容上限の0.5%を突破した。しかし、新たな展望リポートを踏まえ、市場では「黒田総裁の任期中は政策修正は考えにくい。物価指標は重要だが上限アタック再燃はないのではないか」(債券ストラテジスト)との声が出ている。

(和田崇彦 編集:青山敦子)