【ベルリン時事】20日にドイツ南西部ラムシュタイン米空軍基地で開かれたウクライナ軍事支援会議では、参加した欧米諸国を中心に50カ国超が今後も団結して支援を加速させる方針を確認した。しかし、ウクライナが本命視していたドイツ製主力戦車「レオパルト2」の供与では合意が見送られた。ロシアによるウクライナ侵攻は来月で1年を迎えるが、支援の度合いを巡り温度差が生じ始めている。
◇独、軍事的責任負えず
ピストリウス独国防相は20日、レオパルト供与の決定について「ドイツだけが邪魔をしているという印象は誤りだ」と述べ、他の支援国の中にも異論があることを示唆した。供与に向けた協議が継続されるが、具体的な決定の時期などは示されていない。
ショルツ独首相は、供与の決定には米国の後押しが必要との意向を示してきた。レオパルト投入で戦局に響きロシアの矛先が北大西洋条約機構(NATO)に向かうことを警戒しており、米国を巻き込んでけん制する狙いがあったもようだ。ドイツ自体も米国の「核の傘」に守られており、軍事的な責任を負いきれない側面もある。
米国は独側にレオパルト供与を勧めつつ、「ドイツが独立して決めることだ」(米軍)と深入りは避けた。ロシアが対応をエスカレートさせるのを回避したい考えは米国も同じだ。
一方、ウクライナと国境を接し、ロシアの脅威にさらされるポーランドは前のめりだ。本来必要とされるドイツの承認なしに自国のレオパルト2を引き渡す考えを示唆した。AFP通信によると、ブワシュチャク国防相は20日、15カ国がレオパルト供与の実現に向けた連携を協議したと明かし、ドイツへの圧力を強めた。
◇停戦への思惑も
ウクライナの戦況はこう着状態が続いているが、東部の激戦地では多数の犠牲者が出ており、ミサイル攻撃で市民への被害も相次いでいる。ゼレンスキー大統領は20日夜の声明で、「戦車について決定を下す他に選択肢がないことは、日に日に明白になっている」と決断を促した。
米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は20日、支援国による武器の追加供与や訓練の提供を踏まえて「前線の守備が安定する可能性は大いにある」としつつも、年内に軍事力で圧倒することは「極めて難しい」と認めた。
年明け早々にフランスが「軽戦車」供与を表明したことを皮切りに、主要国はこれまで供給してこなかった米欧製の戦闘車などの提供を相次ぎ決めた。だが、ウクライナが強く求めてきた主力戦車は英国の14台にとどまり、長射程ミサイルについては供与を表明した国はなかった。支援国はロシアとの全面衝突を避けつつ、ウクライナを優位に立たせた上で停戦に持ち込みたい思惑があるとみられ、難しい調整を迫られている。