ウクライナ南部ヘルソンから避難してきた子どもたち=2022年4月、南部オデッサ(EPA時事)
ウクライナ南部ヘルソンから避難してきた子どもたち=2022年4月、南部オデッサ(EPA時事)

     ロシアが侵攻・占領後に一方的に「併合」したウクライナ南部ヘルソン州から、5歳以下の子供14人が連れ去られ、ロシアが実効支配するクリミア半島の児童養護施設に入所した可能性があることが分かった。独立系メディア「ビョルストカ」が29日までに伝えた。ウクライナの公式集計で300人以上という子供の行方不明の一端が浮かび上がった。

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     この施設はクリミア半島の中心都市シンフェロポリにあり、2020年、劣悪な環境や食事を与えないなどの虐待が表面化。国営ロシア通信で「強制収容所」と表現されたことがある。

     ビョルストカによると、クリスマスに行われた慈善事業のリポートが、モスクワ州の養子縁組サイトに写真付きで掲載された。この施設の職員が代筆した子供14人のサンタクロース宛てのポストカードに「ヘルソンから来た」「シンフェロポリにいる」などと書かれていたという。

     この施設は地元当局が運営し、主に難病や障害を持つ子供が対象。クリミア半島も14年に一方的に「併合」されており、施設はロシア人としての「愛国教育」を行うとうたっている。

     ヘルソン州からの連れ去り情報はこれまでもあり、児童養護施設の子供46人をクリミア半島に送ったと親ロシア派が昨年10月に説明した。しかし、占領下の実態は不明な点が多い。

     ウクライナ最高会議(議会)の人権担当者によると、今月28日時点で行方不明の子供は341人。これは公式確認の数字で、現地メディアは「実際はもっと多い可能性がある」と指摘した。ロシア側で養子縁組された子供は400人に上るとの見方もある。

     ウクライナから連れ去られた子供の養子縁組を促進するロシアのリボワ・ベロワ大統領全権代表(子供の権利担当)については日本政府が27日、資産凍結の制裁対象に指定している。