バイデン米大統領は20日、事前の予告なしにウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した。米大統領は通常、警備の観点から、外国を訪問する際でも専用の航空機やヘリコプター、車両を使うが、今回は約10時間の鉄道利用など異例の旅路となった。
バイデン氏は当初、米東部時間20日夕に米国を出発し、ウクライナの隣国ポーランドに向かう予定だった。しかし、17日に数カ月間検討してきたキーウ訪問を決断。米紙ニューヨーク・タイムズや米CNNによると、バイデン氏は19日午前4時15分(日本時間同日午後6時15分)に大統領専用機(エアフォースワン)で秘密裏に米国をたった。
メディアを代表して取材する数人の記者が同行を認められたが、大統領のキーウ到着まで秘密を保持することを約束し、携帯電話などの電子機器も取り上げられた。
大統領専用機でポーランドに降り立った後、バイデン氏は約10時間かけて鉄道で移動し、20日午前8時(日本時間同日午後3時)にキーウに到着した。午前8時半にウクライナのゼレンスキー大統領夫妻が大統領宮殿で出迎えた。キーウの大聖堂を訪問した際には空襲警報が鳴る場面もあった。
米国はバイデン氏のキーウ訪問の数時間前にロシアに事前通知していた。AP通信によると、米軍はバイデン氏の訪問前から、早期警戒管制機E3や電子偵察機RC135をポーランドのウクライナ国境付近に飛ばして警戒にあたった。
バイデン氏は正午に在ウクライナ米国大使館を訪問し、大使館員らをねぎらった。午後2時ごろまでにキーウを離れた。キーウでの滞在時間は約6時間だった。
米大統領は過去にも紛争中のイラクやアフガニスタンを事前の予告なしに電撃訪問したことがある。しかし、こうした訪問先でも米軍が活動し、空港など主要なインフラを管理していた。今回はウクライナ国内に米軍の拠点がなく、米大使館も十分に活動できていな状況で訪問した点が異なる。長時間の鉄道による移動も異例だ。
欧州各国の首脳は既にキーウを訪問し、ウクライナを支援する姿勢をアピールしている。バイデン氏がキーウを訪問したことで、主要7カ国(G7)で首脳がウクライナ入りしていないのは、日本だけとなった。【ワシントン秋山信一】