[ソウル 20日 ロイター] – 韓国軍は20日、北朝鮮が東岸沖に弾道ミサイル2発を発射したと発表した。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹で党副部長の金与正氏は太平洋を「射撃場」にすると警告し、北朝鮮情勢を巡り緊張が高まっている。
日本の防衛省によると、北朝鮮が発射したミサイルは2発で、午前6時59分ごろと同7時10分ごろ西岸付近から発射した。1発目は最高高度約100キロ、飛行距離約400キロ、2発目はそれぞれ約50キロ、約350キロだったと分析している。
北朝鮮国営メディアは、多連装ロケット砲から発射体2発をそれぞれ395キロと337キロ先の目標に向けて発射したと報道。朝鮮中央通信(KCNA)は「今回動員した600ミリ多連装ロケット砲は戦術核兵器の手段」で、敵の飛行場を「まひ」させることができると伝えた。
岸田文雄首相は記者団に、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の長距離弾発射に続いて短距離弾道ミサイル2発を発射したとして、国連安全保障理事会に緊急会合の招集を要請していると明らかにした。その上で、「引き続き日米、日米韓の連携を深めていかないといけないと認識している」と述べた。
また、韓国軍合同参謀本部は、発射は「重大な挑発行為」だと強く非難した。
韓国外務省は20日、一連の発射を行った北朝鮮の兵器プログラムに関連し、4人の個人と5つの団体に制裁を科すと発表。「わが政府は北朝鮮の挑発行為には必ず代償が伴うことを明確にしている。度重なる挑発は韓米の抑止力を強化し、国際的な制裁網を強化する結果となる」とする声明を出した。
同省によると、韓国の核担当高官が米日の担当者と電話協議し、北朝鮮の挑発はいかなる形でも正当化できないず、「身勝手な結果」に直面するだけとの見解で一致した。
米インド太平洋軍は今回の発射について、差し迫った脅威ではないものの、北朝鮮の非合法な兵器プログラムによる「不安定化の影響」を浮き彫りにしているとの認識を示した。
国連のドゥジャリク報道官は、安保理決議で禁止されている「いかなる挑発的な行動も直ちにやめる」こと、および非核化対話を再開することを北朝鮮に求めた。
<高まる緊張>
北朝鮮は18日にもICBMを発射し、北海道渡島大島の西約200キロに落下した。
20日のミサイル発射により、判明している北朝鮮の兵器実験は今年3回目となる。
KCNAによると、金与正氏は談話を発表し、米国が朝鮮半島で戦略的資産の存在感を高めていることを警告。北朝鮮の安全保障への影響を注視しているとし、「太平洋をわれわれの射撃場に活用する頻度は米軍の行動にかかっている」とけん制した。
さらに、北朝鮮は「満足のいく」ミサイル技術と能力を保有しており、「今後は兵力拡大に重点を置く」と表明。「緊張を激化させる最悪の狂人たちに、その行動の代償を払わせるというわれわれの意志に変わりがないことを再度表明する」とした。
また、18日の「不意の」発射実験に9時間の準備が必要だったとして北朝鮮のICBM能力の信頼性を疑問視する一部韓国専門家を批判。気象状況を考慮し、米韓の偵察機が去った後の「最も適切な時間」に発射が実施されたと説明した。
その上で「他人の技術を疑ったり、心配したりするのではなく、自らを守る対策について、より頭を働かせた方がいい」とした。
米国と韓国は、米核資産の運用改善を目的とした机上演習を今週行うほか、3月には毎年春に実施する軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」を予定しており、半島の緊張は今後数カ月でピークに達するとの見方が専門家から出ている。
梨花女子大学(ソウル)のパク・ウォンゴン教授は北朝鮮による20日のミサイル発射と声明について、米韓合同軍事演習に対して「前例のないほど絶えざる強力な」対応を示すという北朝鮮外務省の最近の警告に合致していると指摘。「北朝鮮は演習を問題として取り上げることで核能力を強化しようとしているようだ」と述べた。
韓国・統一研究院のシニアフェロー、ホン・ミン氏は金与正氏による太平洋の言及について、北朝鮮がさらに長距離のミサイルをより頻繁に発射することを示唆していると述べた。