[ソウル/東京 6日 ロイター] – 韓国は6日、韓日間で長らく懸案となっている元徴用工問題の解決策を発表、韓国政府傘下の財団が被告の日本企業に代わって賠償する方針を表明した。
聯合ニュースによると、尹錫悦大統領は、今回の措置は「未来志向の韓日関係」に対する「決意」に基づくと述べた。
財団には民間企業が出資する。朴振外相は「冷え込んだ韓日関係をこれ以上放置すべきではなく、国益と国民のため悪循環を断ち切る必要がある」とした上で、日本が反省と謝罪を公式に表明したこれまでの声明を履行するなど誠実に対応することを期待すると述べた。
日本企業による資金拠出の可能性を問われたのに対しては、日韓双方の経済界が自発的に寄与する計画を検討しており、日本政府も反対しない立場だと理解していると述べた。
<日本は「評価」>
元徴用工問題を巡っては、日本はかねて1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場を取り、文在寅前政権と対立していた。
岸田文雄首相と林芳正外相は解決策を「評価」するとの見解を相次ぎ表明した。日本政府関係者によると、尹大統領は3月中に訪日する方向で調整している。
経団連など日本の経済団体も冷え込んでいた日韓関係に前向きな動きが出てきたと評価した。
韓国最高裁から賠償の支払いを命じられた三菱重工業と日本製鉄は、解決策が発表されたことに対し、「コメントする立場にない」としている。
韓国産業通商資源省は、元徴用工問題を巡り日本が2019年に強化した韓国向けの半導体材料輸出管理について両国が協議する間、世界貿易機関(WTO)紛争解決手続きを中断すると表明。日本の経済産業省も2019年以前の状態に戻すため日韓の協議を速やかに行っていくと発表した。
<米は歓迎、韓国国内で反発>
聯合ニュースはこれより先、解決策の一環として留学生の奨学金など若者の交流を支援する企業出資の基金創設で韓国と日本が暫定合意したと伝えた。
中国の台頭や北朝鮮のミサイル・核による脅威を踏まえ、同盟国の結束を強めたい米国にとっても、日韓関係の悪化は懸念材料だった。
バイデン米大統領は発表について「米国の最も近い同盟国2カ国の協力とパートナーシップにとって新たな章」と強調。「日韓両国の国民にとって、より安全かつ豊かな未来に向けた重要な一歩だ」とした。
一方、元徴用工の一部や韓国最大野党からは反発の声が上がった。韓国最大野党の「共に民主党」は、解決策を「服従的な外交」と非難。
15人の原告の一部は解決策を拒否すると述べ、さらなる法廷闘争を辞さない姿勢を示唆した。
元徴用工の弁護士は「日本による完全な勝利」とフェイスブックに投稿した。
一方、日韓請求権協定で恩恵を受けた韓国企業のうち、KT&Gは賠償を巡る協議を注意深く見守り、合意履行に忠実に協力する方針を示した。韓国電力公社(KEPCO)はこの問題を検証するとした。
鉄鋼大手ポスコの持ち株会社は、解決策の意図をどのように支援するか検討していくとした。