中国の習近平国家主席のロシア訪問が20日に始まるのを前に、露大統領府は19日、プーチン大統領が中国共産党機関紙、人民日報に寄稿した論文を公開した。プーチン氏は「中露関係は史上最高だ」としつつ、米国が中露に不当な圧力をかけていると主張。中露は「世界の一極支配をもくろむ米欧の試み」に共同対処していくべきだとする認識を示した。ウクライナ情勢に関しては「中国の中立的立場に感謝する」とした。
論文はプーチン氏の現状認識を示すもので、21日に予定される首脳会談でもプーチン氏は同様の立場を習氏に伝達するとみられる。
プーチン氏は論文の冒頭で「間もなく始まる会談を楽しみにしている。会談は中露関係全体に新たな原動力を与えるはずだ」と指摘。孔子の「友が遠方から来るのは喜ばしい」との言葉を引用した。
論文は「過去10年間、世界には多くの良くない変化があったが、中露の友情は変わっていない」と指摘。中露関係は一方が他方の上位に立つものではなく、「東西冷戦期の同盟よりも優れている」と評価した。
プーチン氏は、昨年の中露間の貿易額が過去最高の1850億ドル(約24兆円)に達し、今年中に2000億ドルを超える見通しだと指摘。両国通貨による取引の割合も増え「中露関係はいっそう主権的になっている」としたほか、エネルギー分野や宇宙開発分野での協力も進展していると述べた。
一方でプーチン氏は米欧批判を展開。バイデン米政権がロシアを「直接的な脅威」、中国を「戦略的競争相手」と位置付け、同盟国や友好国とともに中露を封じ込めようとしていると主張した。米欧は「古臭い教条と世界支配に死に物狂いで固執し、世界の運命を危険にさらしている」としたほか、他国を考慮せず一方的な安全保障政策を追求する米欧への懸念を中露は共有しているとも指摘した。
ウクライナ侵略に関し、プーチン氏は「中国は(米欧による世界支配への対抗という)背景と真の理由を理解している」「ロシアに最後通告を突き付けたのは米欧側だ」と強調し、侵略を正当化した。
その上で「ウクライナ危機は米欧の世界支配願望の表れの全てではない」と主張。「北大西洋条約機構(NATO)はアジア太平洋地域にも浸透しようとしている」と中国にとっても他人ごとではないとし、中露の連携強化を訴えた。