[ロンドン 22日 ロイター] – 今年の初めは「厳寒期」にあった暗号資産(仮想通貨)のビットコインだが、わずか3カ月足らずで力を取り戻し、22日には約9カ月ぶりの高値を付けた。年初来の上昇率は70%を超え、他の主要資産をしのいでいる。
昨年は仮想通貨全般の価格が急落し、関連企業の経営破綻や不祥事が相次いだ。そうしたどん底状態からの急反発は、これまで何度も見てきた光景だ。ビットコインの15年の歴史は、劇的な相場上昇と暴落の繰り返しだった。
価格上昇の原動力は金利だ。
市場は今、中央銀行の利上げがピークに近いとみている。こうしたシナリオはビットコインのような「リスクオン」資産の追い風になると、ロイターが取材した投資家やアナリスト6人は語った。
エコノミストのノエル・アチェソン氏は「マクロ動向が最大の要因だ」と指摘。「ビットコインは単にリスク資産だというだけではなく、全リスク資産の中でマネーの流動性に最も敏感だと言える」と説明した。
銀行セクターの混乱から、ビットコインが決済手段として普及するという未実現の期待まで、他にも要因はある。
ビットコインの週間上昇率は、19日までの1週間に過去4年の最高を記録。わずか12日間で45%も上昇した。
米シリコンバレー銀行と米シグネチャー銀行が経営破綻し、167年の歴史を持つクレディ・スイスがUBSに救済合併されるといった状況下、ビットコインは伝統的な金融が抱えるリスクとは無縁の資産である、という言説が魅力を増している。
仮想通貨交換所、ゾディア・マーケッツのウスマン・アハマド最高経営責任者(CEO)は「銀行が潰れたからビットコインが成功する、と言ってしまうとやや短絡的だが、信頼感は鍵を握る要因だ。銀行システムの信頼感は傷ついた」と述べた。
アナリストによると、ビットコインの上昇を主導しているのは個人投資家層だ。年金基金などの機関投資家はこれまで通り、仮想通貨が革命を起こすとの見方には懐疑的であり続けるだろうと業界関係者らは話す。
仮想通貨データ企業コインゲッコーのジョン・ヤン・チャン調査責任者は足元のビットコインの上昇について、小口から大口まで幅広い個人投資家が支えているようだとし、「機関投資家はこの上昇局面で脱出している形跡が見られる」と語った。
実際、デジタル資産運用のコインシェアーズによると、機関投資家に好まれるビットコインの投資商品からは先週、1億1300万ドルが流出した。同社は、銀行セクターが混乱したため流動性を確保するために売りが殺到したと解説した。
<既視感>
ビットコインは過去にも、世界的な金融政策の転換に伴って相場が大きく振幅してきた。
新型コロナウイルスのパンデミックに対応して当局が大量の資金供給を実施した際には、個人投資家の買いで2020年9月から21年4月にかけて6倍にも値上がりした。
しかし21年末にインフレが高まって利上げが始まると、ビットコインは過去最高値の6万9000ドルから75日間で半分以下の価格に落ち込んだ。昨年は利上げを背景に仮想通貨が軒並み下落し、ビットコインの下落率は65%を超えた。
(Tom Wilson記者)