[ニューヨーク 4日 ロイター] – 米ニューヨーク州の大陪審に起訴されたドナルド・トランプ前大統領(76)は4日午後、ニューヨーク市内の裁判所に出頭し、業務記録の改ざんなどに絡む34件の罪状に対し無罪を主張した。
検察側は、2016年の大統領選挙を控え、トランプ氏が自らの性的関係が公表されるのを抑えるため2人の女性への支払いを画策したと指摘。選挙法違反を隠すために業務記録を改ざんしたと主張している。
2人の女性はポルノ女優のストーミー・ダニエルズさんと、元「プレイボーイ」モデルのカレン・マクドゥーガルさん。
判事は、次回の対面での審理を12月4日に設定した。
バイデン大統領は、トランプ氏の裁判に関するコメントを控えている。
罪状を合わせると、ニューヨークの法律では100年を超える懲役刑となるが、裁判で有罪になったとしても、実際の懲役刑はこれよりもはるかに短くなる公算が大きい。
裁判官が許可した法廷内のカメラマンが撮影した写真には、弁護団に挟まれ、弁護席に座るトランプ氏の姿が写っている。トランプ氏は弁護士に挟まれて両手を組んで座り、「無罪を主張する」と述べた。
トランプ氏の弁護士、トッド・ブランチ氏はトランプ氏の罪状認否の後、記者団に対し「われわれは激しく戦う」と表明。トランプ氏は容疑に対して、いら立ち、動揺し、怒っているとし「トランプ氏はやる気に満ちている。止めるつもりはなく、ペースを落とすこともない」と述べた。
検察側は罪状認否手続きの間、トランプ氏が一連のソーシャルメディア投稿を行い、その中には自身が起訴されれば「死と破壊」をもたらすという脅迫的な内容もあったと指摘。判事は各当事者に「暴力や内乱をあおるような発言は控えてほしい」と要請した。
紺色のスーツに赤いネクタイを締めたトランプ氏は裁判所の建物に入る際、集まった群衆に手を振ったものの、発言はしなかった。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の記者によると、トランプ氏は指紋を採取されたものの、顔写真は撮影されなかったという。
起訴に向けて取り組んだマンハッタン地区のアルビン・ブラッグ検事(民主党)は記者会見し「われわれは本日、誰もが法の前に平等に立つことを保証するという、厳粛な責任を果たす。どんなにお金があっても、どんなに権力があっても、この不朽のアメリカの原則は変わらない」と述べた。同検事はトランプ氏や他の共和党員から、政治的な理由で同氏を標的にしたと非難されている。
マンハッタン地区で司法手続きを監視する団体で経歴がある弁護士のアダム・カウフマン氏は、ブラッグ検事のチームが確かな証拠を提示したようだと指摘。事実関係を通じて業務記録改ざんを陰謀の一部としており、非常に効果的だとの見解を示した。
トランプ氏はこの日のうちにフロリダ州の邸宅「マール・ア・ラーゴ」に戻り、午後8時15分(日本時間5日午前9時15分)から演説する。
▽トランプ氏、罪状全34件に無罪主張-「不法行為」隠蔽と検察指摘<bloomberg日本語版>2023年4月5日 4:36 JST
- 起訴はNY州での業務記録の改ざんに関連とマンハッタン地区検事
- トランプ氏は大統領選に影響を与える計画を画策したと起訴状
米大統領経験者として初めて起訴されたトランプ前大統領は4日午後、ニューヨーク市マンハッタンの州裁判所で罪状認否に臨み、起訴された34件の罪状に対して無罪を主張した。起訴状では、2016年大統領選を操作する犯罪的企てで業務記録の改ざんがあったとしている。
24年大統領選への出馬を正式に表明しているトランプ氏は3月30日、16年大統領選期間中の元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんへの口止め料支払い指示を巡りニューヨーク州の大陪審に起訴された。起訴は全米で激しい論争を巻き起こしており、4日の罪状認否を前にニューヨーク市警察やシークレットサービスが厳戒態勢を敷いていた。
マンハッタン地検の検事事務所は起訴状に付随する公訴事実でトランプ氏の罪状を説明。起訴内容はニューヨーク州での業務記録の改ざんに関連したもので、記録改ざんは16年大統領選の前後において「不利な情報と不法行為」を隠蔽(いんぺい)するために行われたとしている。
トランプ氏の弁護人、ジョー・タコピナ氏は2日のCNNの番組で、前大統領は「非常に大きな声で堂々と」無罪を主張するだろうと述べていた。
トランプ氏がダニエルズさんへの口止め料支払いを隠蔽するのに果たしたとされる役割について、マンハッタン地区のブラッグ検事の下で検察が捜査を進め、今回の起訴に至った。
前大統領の元顧問弁護士として「フィクサー」とも呼ばれたマイケル・コーエン元受刑者は、トランプ氏と不倫関係にあったとされるダニエルズさんに口止め料を支払い、その後、前大統領側から極秘に返済を受けたと証言している。
起訴状付随の公訴事実では、「15年8月から17年12月の間、被告は自身にマイナスな情報の公表を阻止し、被告の選挙展望に利するよう、こうした情報を特定して口止め料を支払うことで16年大統領選に影響を及ぼす計画を画策した」としている。
その上で、「こうした違法な計画を実行するため、参画者は選挙法に違反し、ニューヨークのさまざまな組織の業務記録への虚偽記載を行ったほか、虚偽記載を促した。また税金対策目的で、計画を推進する中で行った支払いの本来の目的を偽る措置を講じた」と論じた。
34件の罪状はニューヨーク州法では通常軽罪だが、違法な手段を用いてトランプ氏の選挙展望を有利なものにしようとする別の犯罪のためのものだったとして、今回の件では重罪とされている。これらはいずれも、同州法で最大4年の禁錮刑となる「Class E」と呼ばれる重罪に当たる。
トランプ氏(76)はこのほか、20年大統領選で敗北したジョージア州での投票結果を覆そうしたとされる問題について、アトランタ地区検事の捜査を受けているのに加え、大統領任期終了後にホワイトハウスの機密文書をどう取り扱ったかなどに関し、連邦の独立した特別検察官が監督する刑事捜査の対象ともなっており、これら2件の捜査の一方もしくは両方が起訴につながる可能性もある。
また、ニューヨーク州のジェームズ司法長官は昨年9月、トランプ氏が自身の不動産会社で資産評価に関し不正行為を働いたとして、同氏を提訴した。
前大統領は今回の起訴や一連の調査・捜査などについて、事実無根で自分を陥れようとする党派的企ての一環だと主張している。ニューヨーク州のブラッグ検事とジェームズ司法長官、ジョージア州のウィリス検事はいずれも民主党所属で、スミス特別検察官は無党派だ。
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原題:Trump Pleads Not Guilty to 34 Counts Brought by Manhattan DA (1)
Manhattan DA Announces 34-Count Felony Indictment of Trump(抜粋)