[東京 7日 ロイター] – 日銀の黒田東彦総裁は7日の退任会見で、賃金が上昇しやすい状況になっていることなどを挙げて「2%の物価目標の達成に近づいた」と述べた。金融緩和を通じて経済の成長を促進し、賃金上昇が続く状況を維持することが最も重要だと語った。

春闘の3次集計では定期昇給込みの賃上げ率が3.70%、ベアも2%を超えた。黒田総裁は春闘はこれまでのところきわめて順調であり「来年も順調な賃上げ交渉が進むことが2%物価目標を持続的・安定的に達成するには重要だ」と述べた。

「賃金、物価は上がりにくい」というノルム(社会規範)が「明らかに変容しつつある」と強調する一方、物価目標の具体的な達成時期については、欧米中銀のようにデータをよく見ていく必要があると述べ、明言しなかった。

一方、2020年に急拡大した新型コロナの感染拡大前には、物価目標に近づいたと認識していたことを明らかにした。

副作用が指摘される長短金利操作(YCC)は有効と強調し、「YCCは続けられず、(黒田総裁就任当初に展開した)量的・質的緩和(QQE)は続けられるということはない」と指摘した。

黒田総裁は、大規模な資産買い入れを通じて金融市場や人々の期待に働きかける戦略を重視した。13年4月の量的・質的金融緩和導入など金融市場に多くのサプライズをもたらしたが「金融市場へのサプライズを狙って政策を行ってきたということは全くない」と述べた。

YCCや量的緩和などの非伝統的金融政策よりも、短期金利操作を主軸とする伝統的金融政策の方が「人々の期待に働きかける要素は大きい」と説明した。

(和田崇彦、竹本能文)