[11日 ロイター] – 国際通貨基金(IMF)は11日に公表した世界金融安定報告で、金融市場参加者が金利上昇に対し十分に備えていなかったことが、金融システムの健全性を巡る重大な不確実性につながっていると指摘し、金融市場の「危険な脆弱性」を警告した。

また、約1カ月前の米銀2行の破綻を受け、消費者と企業の信用に大きな影響を及ぼす銀行部門の弱点が明らかになったことから、特に米国の地方銀行に対する一段と厳しい監視が必要になるとの見解も示した。

IMFは世界金融安定報告で、世界的な金融安定リスクは半年前の前回報告時と比べ「急速に」増大したと指摘。3月に米国でシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行が突然破綻したほか、スイスで経営難に見舞われた金融大手クレディ・スイスがUBSによる買収を余儀なくされたことを受け「市場心理は依然として脆弱で、多くの機関や市場でなお顕著な緊張が見られている」とした。

その上で、金融引き締め政策に加え、約10年前の世界的な金融危機以降の脆弱性の蓄積によりもたらされた課題が今回の銀行破綻で「強力に思い起こされた」と指摘した。

IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長はインタビューに対し「銀行が多くの資本と流動性を確保していることを踏まえても、脆弱な(金融)機関が存在し、それが金融システム全体に波及するおそれがある」とし、IMFは中央銀行が金融システムに対する信頼を維持するための手段を備えているかどうか、注意深く見守っていくと述べた。

IMFはまた、潜在的なマクロ経済リスクとして、中国経済の力強い再開やウクライナでの戦闘激化など、物価上昇の加速につながる可能性のある数点の要因を列挙。エイドリアン局長は「金融政策の引き締めが続く中、リスクは明らかに存在している」と述べた。