[東京 12日 ロイター] – 日銀の植田和男総裁は12日、信託大会のあいさつで、日銀として国内経済をしっかりと支え賃金の上昇を伴う形で物価目標を持続的・安定的に実現できるよう、金融緩和を継続していくとの見解を示した。
植田総裁は、黒田東彦前総裁の下で日銀が示してきた経済・物価の見方を踏襲した。国内経済については「コロナ禍によって落ち込んだが、現在は持ち直している」と指摘。今後も、緩和的な金融環境や政府による経済対策の効果にも支えられ国内経済は回復を続けるとの見方を示した。
物価については、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は輸入物価上昇による価格転嫁の影響で足元では3%程度の伸びとなっているものの、「今後、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果に加え価格転嫁の影響も減衰していくため、物価上昇率のプラス幅は今年度の半ばにかけて縮小していく」とした。
<米欧の金融不安、日本の金融システムへの影響は限定的>
日本の金融システムについては「全体として安定性を維持している」と評価。世界的な金融引き締めの下でも「日本の金融機関は、適切な金融仲介機能を発揮しうる充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有している」と指摘した。
3月の米欧の金融機関の経営不安を受け海外の金融システムを巡る不確実性が高まったが「日本の金融システムに及ぼす影響は限定的」との認識を示した。
植田総裁は米国に出張中のため、内田真一副総裁があいさつを代読した。
(和田崇彦 編集:田中志保)