[13日 ロイター] – 米人気歌手レディー・ガガさんらが2年前、動画共有アプリのTikTok(ティックトック)に投稿して人気が沸騰したぬいぐるみの「スクイッシュマロ」。この製造会社が昨年、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏のビジネス帝国の傘下に入った。
もちもちした感触と可愛いデザインが人気のスクイッシュマロを手がけるのは、ジャズウェアーズ社。経営者のジャッド・ゼバースキー、ローラ・ゼバースキー夫妻は33年前にマイアミ大学の法科大学院で出会ったころ、ぬいぐるみの会社で成功を収めるなど想像だにしていなかった。
2人は1993年に結婚して法律の道に進んだが、ジャッド氏はすぐに自分の性分ではないと気付く。4年後、彼はジャズウェアーズを創業し、最高経営責任者(CEO)に就いた。
「子どものころからポップカルチャーが本当に好きだった」──。バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが今月、米ネブラスカ州オマハで開いた株主総会で、ジャッド氏はインタビューに応じた。
「漫画の本やおもちゃが大好きで、あまり上手ではないが自分でも製作している」とジャッド氏。「妻に『おもちゃを造りたい』と告げたら『夢を追うべきよ』と言われ、その通りにした」という。
ローラ氏は2005年、訴訟担当弁護士の仕事を投げ打って夫の事業に加わり、社長になった。
ジャズウェアーズの年商は2021年に10億ドルを突破し、その約40%を販売個数1億個超えのスクイッシュマロが占める。売上高の残りは自社ブランドや、フォートナイト(オンラインゲーム)、ポケモン、スター・ウォーズなどの外部ブランドのライセンス事業で稼いでいる。
バークシャーは昨年10月、ジャズウェアーズの親会社である保険持ち株会社アレゲニーを115億ドルで買収した。
バフェット氏は電子メールの書面で「ジャズウェアーズは宝石だ。ジャッド、ローラ両氏はバークシャーにとって理想的な経営者だ」と述べた。
<グッとくる>
バークシャー株主総会の販売イベントでは、バフェット氏と長年の相棒チャーリー・マンガー氏を模したスクイッシュマロが大人気で、1万個が飛ぶように売れた。電子商取引サイトのイーベイではそれから間もなく、これらの一部が1個500ドル以上でオークションに出されていた。
2017年に誕生したスクイッシュマロは、ジャズウェアーズがその玩具会社を買収したことで同社の事業になった。
このぬいぐるみの人気を確信していたゼバースキー夫妻だが、当初は大衆に売り込むのに苦労した。
スクイッシュマロの種類は今や2000を超え、それぞれに名前と誕生日(スクイッシュ・デート)、ストーリーがある。
「たっぷり愛情を注ぐべきブランドと思った」とジャッド氏。「グッとくるんだ。玩具産業でグッとくる商品ができたら、すごいことが起きてもおかしくない」と語る。
ゼバースキー夫妻は2014年、事業拡大のためにジャズウェアーズ株の一部をアレゲニーに売却し、同社が2年後に過半数株式を取得した。
アレゲニーを率いるジョゼフ・ブランドン氏は以前、バークシャー傘下の再保険会社ゼネラル・リーを経営していた人物。アレゲニーは現在、バフェット氏の強固なバランスシートに支えられている。
ジャッド・ゼバースキー氏は「ジョー(ジョゼフ氏)は、私たちの人生がすごく良くなるだろうと言ってくれた。世界一尊敬されている、世界最高の企業と手を組んだのだからと」と語った。
<好奇心を維持>
夫妻は現在、バークシャー副会長でバフェット氏が後継者に指名したグレッグ・アベル氏の指揮系統下にある。
「グレッグは、私たちが学んできたバークシャーの事業モデルそのもの。私たちに経営を任せ、私たちが最良だと思う方法でやらせてくれる」とローラ氏は話した。
ジャズウェアーズ製品の生産地は主に中国で、ベトナム、カンボジア、インドネシアにも生産拠点を拡大している。米国は生産コストが高すぎる。
ジャッド氏は、衣装など玩具の「付随」ビジネスに手を広げることも検討中だと言う。
急速に変化する世界の中で、次にどの分野に進むかを決めるのは好奇心だとジャッド氏。「山頂にたどりついた、もう好奇心を失ったと思ったら、必ず企業は転落し始める」と語った。
(Jonathan Stempel記者)