【ロサンゼルス時事】米映画、ドラマの脚本家1万人超による15年ぶりのストライキが始まってから1カ月。動画配信市場が拡大する中、脚本家は待遇改善に加え、人工知能(AI)の利用制限などを訴えているが、製作会社との溝は埋まっていない。交渉長期化は製作の停滞につながり、ハリウッドを中心とした映像産業に影響を及ぼし始めている。
「抑制の利かない資本主義に動かされ、人件費や道徳的な意味に目を向けないテクノロジーは、私たちに対する脅威だ」。全米脚本家組合(WGA)の交渉幹部は2日、ユーチューブに投稿した動画で語った。
争点の中心は、動画配信サービスへの対応だ。新型コロナウイルス禍で急成長したが、テレビでの再放送と異なり、二次使用料が脚本家に入らない契約が多い。製作会社側は待遇改善を提案したと説明するが、脚本家は不十分だと訴える。反発の背景には、製作会社幹部が高額報酬を受け取っているといった格差への批判もある。
WGAは、文章や画像を作る生成AIが自分たちの仕事を奪いかねないとの懸念を強め、利用に一定の制限をかけることも求めた。AIに原作を書かせないことや脚本家の作品を学習させないことが具体的な要求だが、これも製作会社側が拒否したという。
WGAによると、動画配信大手ネットフリックスが手掛ける世界的人気ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や、テレビ局NBCの人気コメディー「サタデー・ナイト・ライブ」など、50近くの作品の制作に遅れが出ている。長引く対立は脚本家の生活を圧迫するとともに、製作会社の業績を悪化させるリスクもはらんでいる。