[東京 9日 ロイター] – 日銀の植田和男総裁は9日、衆院財務金融委員会で、金融緩和の出口戦略に向かう局面で上場投資信託(ETF)を持ち続けることも「1つの選択肢だと考えている」と述べた。前原誠司委員(国民民主党・無所属クラブ)の質問に答えた。
植田総裁は、出口が近づいてきたときに「(ETFを)どういう方法で処分してくのか、しないのかはきちんと政策委員会で議論した上で公表していきたい」と話した。
日銀の保有ETFは3月末時点で37兆1160億円、時価は53兆1517億円で16兆0356億円の評価益がある。2023年3月期決算では保有ETFからの分配金が1兆1044億円に上った。
日銀は現状、ETFの構成企業への議決権行使はスチュワードシップ・コード(機関投資家の活動指針)の受け入れを表明した投資信託委託会社を通じて行っている。植田総裁は「直接個々の企業に議決権を行使することなどによって、ミクロの資源配分や各企業の経営に強く関与することは適当でない」と述べ、日銀が自ら企業に賃上げを働きかけていくことに否定的な見方を示した。
今年の春闘は30年ぶりの高い賃上げ率となったものの、実質賃金はマイナスが続いている。植田総裁は実質賃金のマイナス推移について「輸入物価の上昇を起点とした価格転嫁の影響が非常に大きい」と指摘。物価へのコストプッシュ要因は今後減衰し、名目賃金の上昇率の高まりと相まって実質賃金の前年比マイナス幅は徐々に縮小していくとの見通しを示した。
植田総裁は2%物価目標の持続的・安定的の達成には「まだ少し間がある」とし、「粘り強く金融緩和を継続していく」と強調した。