ウクライナ軍がロシア軍に対する反転攻勢に着手した。ロシアのプーチン大統領は9日、「ウクライナの攻勢が始まった」と明言。ウクライナ軍は8日に南・東部の前線で軍事作戦を本格化させ、複数の地点で戦闘が激化。ロシア軍は頑強に抵抗を続けているもようで、西側諸国の軍事支援を受けるウクライナ軍が、どこまで兵力の損耗を許容し、前進を試みるかが焦点となる。
ウクライナ、反転攻勢開始か 南・東部戦線でロシア軍攻撃―独製戦車投入の情報
ウクライナのゼレンスキー大統領も10日、キーウ(キエフ)での記者会見で、反転攻勢は既に始まっていると認めた。これに先立ち9日のビデオ演説で、軍幹部と前線の状況について協議したと説明。「行動を必要としていたり、敵が一定の敗北を喫する可能性があったりするあらゆる方面に注意を向けている。防御、攻勢、前線での前進、そのいずれもだ」と強調した。
英国防省は10日の戦況分析で「過去48時間にウクライナ側の重要な作戦が東部と南部の複数の地域で行われている」と指摘。「一部の地域ではウクライナ軍が順調に前進し、ロシアの最初の防衛戦を突破したようだ」とする一方で、「別の地域ではウクライナの前進は遅くなっている」との見方を示した。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、南部ザポロジエ州オリヒウ周辺で激しい戦闘が起きていると報道。ウクライナ軍が投入したドイツ製戦車「レオパルト2」3両、米国製の歩兵戦闘車「ブラッドレー」8台が損害を受けたと分析した。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は9日、衛星写真の解析などから、ロシアが「第2次大戦以来、欧州最大の防衛システムの一つを設計した」と指摘。特にザポロジエ州では、塹壕(ざんごう)や障害物などで守りを固め「ウクライナ軍の攻勢を遅らせ、ロシア軍に有利な地点へ誘導している」という。
ウクライナ軍には、オリヒウ周辺からザポロジエ州南部メリトポリを経てアゾフ海まで南進し、ロシアの占領下にある南部地域を東西に分断する狙いがあるとみられている。専門家は、反転攻勢が数カ月にわたり続く可能性があるとの見方を示している。