巨額の債務を抱えて経営危機に陥った中国不動産開発大手、中国恒大集団の再建が難航している。3月には外貨建て債務の再編案を公表したものの、債権者との交渉は難航。資金繰りも悪化し、各地で建設工事が停滞している。負債総額は2021年末時点で1兆8980億元(約37兆円)と、国内総生産(GDP)の1%を超える規模で、中国経済の先行きに影を落としている。
経営危機のきっかけは、20年に中国当局がバブル抑制のため導入した不動産企業への融資規制の強化だ。資金繰りが行き詰まり、21年には実質的なデフォルト(債務不履行)に陥った。
消費者の信頼も失い、中国の不動産サイトによると、20年に7000億元を超え、国内2位だった販売額は21年、約4600億元に急減。22年には上位200社のランキングから姿を消した。恒大の資料によると、22年の販売額はわずか300億元強にとどまった。
今年3月に公表した外貨建て債務の再編案は、債務をグループ会社の株式に転換するなどの内容で、国内向け債務の再編などにも応用可能な「モデルケース」になると期待された。ただ、恒大は4月、債権者との交渉期間を延長すると発表。その後も動きはなく、難航しているもようだ。
恒大は資産売却で返済資金の確保を急ぐ一方、新規参入した電気自動車(EV)事業の成長に会社存続の望みをつないでいる。だが「今、恒大の車を購入する人はほぼいない」(業界筋)のが実態だ。EVの納入実績は3月時点で累計約900台にとどまり、4月には資金不足を理由に生産工場が一時操業停止に陥った。
落ち込んだ物件販売の回復は難しい状況だ。広西チワン族自治区の南寧で恒大のマンションを完成前に購入した30代の女性によると、昨年はほぼ半年間、工事が行われなかった。香港メディアによると、資金不足により各地で工事が止まっており、江蘇省などではそれに反発するデモが起きた。女性は「きちんと引き渡されるのなら、少し時期が遅れても構わない」と切実な表情で話す。
専門家は恒大の経営について、資金が足りないために新たな投資を行えず、それによりさらに消費者の関心が離れる「悪循環」に陥っていると指摘。「政府がより関与を強める以外に再建の道はない」と提言している。