ドイツ最大の大衆紙「ビルト」=2021年10月、ベルリン(dpa時事)
ドイツ最大の大衆紙「ビルト」=2021年10月、ベルリン(dpa時事)

 【ベルリン時事】ドイツで最大の発行部数を誇る大衆紙「ビルト」が、人工知能(AI)導入による人員削減を含む大規模なリストラ計画を明らかにし、議論を呼んでいる。「デジタルオンリー」を掲げる経営陣はネット媒体への移行や業務の効率化を急ぐが、AIが人減らしの正当化に利用されているとの批判も起きている。

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 「残念ながら、デジタルの世界では、AIに置き換わる仕事をする社僚とは別れることになる」。ビルト幹部は19日、従業員にメールで再編計画を通知した。主にレイアウトや校正、写真の編集などを念頭に置いたものとみられるが、報道で内容が明るみに出ると、ジャーナリストがAIに淘汰(とうた)されるとの臆測も広まった。

 独メディアによると、ビルトの発行部数は過去10年で半減し、昨年末時点で110万部。デジタル部門の売り上げは2割に満たないという。来年から着手される再編計画では、18の地域版を12に縮小し、小規模な支局を閉鎖。200人規模の雇用カットが見込まれている。

 労働組合は「デジタル化やAIの導入を理由にしているが、見え透いたごまかしだ」と批判。南ドイツ新聞は「AIがいかに人員減に役立つか分かった。少なくともレトリックの上では」と皮肉った。