[ワシントン 29日 ロイター] – 米連邦最高裁は29日、ハーバード大学とノースカロライナ大学による人種を考慮した入学選考について、合衆国憲法が定める「法の下の平等な保護に反している」という判断を下した。

これによって、学生の多様性を確保するため長年採用されてきた黒人やヒスパニック系など人種的マイノリティー(少数者)を優遇する「アファーマティブ・アクション(積極的な差別是正措置)」は事実上制限され、米国内の他の多くの大学も選考方法の見直しを迫られることになる。

訴えは2014年に保守派団体が起こし、ハーバード大についてはアジア系米国人の志願者、ノースカロライナ大では白人とアジア系の志願者がそれぞれ差別されていると主張していた。

ハーバード大については保守派判事ら6人が違憲判断を支持、リベラル派判事2人が反対。ノースカロライナ大についても6対3での判断となった。

保守派とされるロバーツ最高裁長官は、学生が「人種ではなく、個人の経験に基づき扱われるべき」なのに対し、多くの大学は「個人が乗り越えた苦難や培った能力・見識ではなく、肌の色が基準になるとの誤った結論を下してきた。憲法史はそのような選択を容認しない」と指摘した。

最高裁は長年、アファーマティブ・アクションを認める判断を下してきた。16年にテキサス大学の入学審査で不合格となった白人の学生が起こした訴訟でも審査の正当性が認められた。

しかし、トランプ前大統領が保守派判事3人を指名したことから判事の構成は保守に大きく傾いた。トランプ氏はこの日の判断を受け、「米国にとって素晴らしい日」と称賛した。

バイデン大統領は、最高裁の判断に強く反対すると表明。「差別はまだ米国に存在し、今日の決定はそれを変えるものではない」と強調した。

大学に対しては学生の多様性を確保するコミットメントを放棄しないよう呼びかけ、入学選考に際し経済的背景や人種差別を含む苦難など、多岐にわたる要素を考慮するよう促した。

また、最高裁について「無法な(rogue)裁判所」かという記者団からの質問に対しては「正常な裁判所ではない」と応じた。

ハーバード大によると、米国の大学の約40%が人種を考慮する何らかの手法を採用している。

最高裁のリベラル派ソトマイヨール判事は、今回の判断が憲法が保障する法の下の平等な保護を覆すもので、教育現場に人種的不平等を一段と根付かせることになるとの懸念を示した。「長年の判例と大きな進展を後退させる」と指摘した。

ハーバード大の指導部は声明で「裁判所の新たな判断と矛盾しないよう、われわれの本質的な価値をどのように維持していくか見極める」とした。ノースカロライナ大も「法に従う」と言明した。