[北京 7日 ロイター] – 中国を訪問中のイエレン米財務長官は7日、現地に進出している米国企業との会合で、中国に市場改革を求め、米国と同盟国は中国の「不公正な経済慣行」と戦っていくと述べた。 

イエレン氏は、米中の意思疎通を深化させ「安定した建設的な関係」を目指すために訪中したと表明。米政府は国家安全保障と人権を守るため行動するとも明言した。

同氏は演説原稿で「高官レベルで直接的かつ明確な意思疎通のラインを持つことが両国の最善の利益になると信じている」とし、世界経済が「ロシアの違法なウクライナ戦争やパンデミックの長引く影響などの逆風」に直面する中、両国が経済・金融リスクを監視する上で定期的な交流が役に立つ可能性があると述べた。

また、中国政府には米国が「両国経済の全面的な分離」を求めていないことを明確に伝えるとした上で、中国の国有企業や国内企業向けの補助金拡大、海外企業の市場アクセスに対する障壁、米国企業に対する最近の「処罰行為」には懸念を表明すると述べた。

中国政府が半導体などに使われる重要鉱物であるガリウムとゲルマニウムの輸出を規制したことにも懸念を表明。米政府は現在、輸出規制の影響を評価中だが、「強靭で多様化されたサプライチェーン(供給網)」の必要性が浮き彫りになったと指摘した。

イエレン氏は中国の計画経済にも言及し、中国経済の過去の急成長を支えた市場原理に基づく慣行に戻るべきだとの認識を示した。

「市場改革に向けたシフトが中国の利益になる」とし「市場原理に基づくアプローチは中国の急成長を促し、多くの人々が貧困から抜け出す助けとなった。これは目覚ましい経済のサクセスストーリーだ」と述べた。

中国で拡大する巨大な中間層が米国製品・サービスの大きな市場になっているとも指摘。米政府の的を絞った対中政策は国家安全保障上の懸念に基づいていると強調した。

「われわれはデカップリングではなく多様化を目指す」とし「世界の二大経済大国のデカップリングは世界経済の不安定要因となる。デカップリングを進めることは事実上不可能だ」と述べた。

在中国米国商工会議所のマイケル・ハート代表はイエレン氏の演説について、中国に政策変更を迫るものだと歓迎。同氏の訪中は米中間の対話や交流を促す重要な意義があると指摘した。