[ワシントン 7日 ロイター] – 米労働省が7日発表した6月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は予想以上に伸びが鈍化し、2020年12月以来2年半ぶりの小幅増にとどまった。ただ、賃金は堅調な伸びを維持し、労働市場の強さが示されたことで、米連邦準備理事会(FRB)が今月の会合で利上げに踏み切ることはほぼ確実とみられる。
非農業部門雇用者数は20万9000人増で、市場予想の22万5000人増を下回った。雇用者数の伸びが市場予想を下回ったのは15カ月ぶり。
今年前半の雇用者数の伸びは月平均27万8000人。労働年齢人口の増加に追いつくためには毎月7万─10万人の雇用創出が必要となる。
4・5月分の雇用者数の伸びは計11万人下方改定され、企業が金利上昇を踏まえ、採用の拡大に消極的となりつつある兆候を示唆した。経済的な理由でパートタイムで働く人も45万2000人増加し、420万人に達した。しかし、雇用の伸びは引き続き底堅く、米経済が景気後退に陥るには程遠い状況を示している。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サール・グアティエリ氏は「労働市場は減速しているように見える」としつつも、FRBが25━26日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で再度ブレーキを踏まざるを得ないほどの減速ペースではないと述べた。
また、セントラルフロリダ大学経済予測研究所のショーン・スナイス所長は「雇用統計は景気後退の匂いを漂わせたが、労働市場は依然として堅調だ」と指摘。「決してFRBの仕事が終わったわけではない。インフレとの戦いは長期化している」と述べた。
業種別では、政府が6万人増加した。しかし依然としてコロナ禍前の水準を16万1000人下回っている。
民間部門雇用者数は14万9000人増と20年12月以来の最小の伸びとなった。
ヘルスケア関連は4万1000人増、建設は2万3000人増、専門職・ビジネスサービスも増加した。
レジャー・接客は2万1000人増加した。しかし、コロナ禍前の水準を36万9000人下回っている。
時間当たり平均賃金は前月比0.4%上昇、前年同月比4.4%上昇でともに5月と同水準だった。
平均週間労働時間は34.4時間。5月の34.3時間から増加したものの、1月の34.6時間を下回った。
コンファレンス・ボードのシニア・エコノミスト、セルク・エレン氏は「企業は労働力の維持・拡大を継続しているが、週間労働時間は増加傾向にはない。これは景気減速下で将来的な採用難を恐れ、解雇ではなく労働時間を短縮してでも雇用を維持することを選択する経営陣の姿勢と一致している」と述べた。
家計調査に基づく雇用は27万3000人増と5月の31万人減から回復した。
その結果、失業率は3.6%と7カ月ぶりの高水準だった5月の3.7%から低下。失業率は22年3月以来、3.4─3.7%の範囲で推移している。
労働参加率は4カ月連続で62.6%。ただ、25歳から54歳までの働き盛りの世代の労働参加率は83.5%と5月の83.4%から上昇し、02年5月以来の高水準に達した。
アップキャストで労働市場を分析する主席エコノミスト、アンドリュー・フラワーズ氏は「労働力需要は依然としてマッチしていないが、1年超前に雇用主を落胆させていた労働力不足は確実に幾分改善している」と指摘。「この力強い労働市場は、働き手を市場に引き戻した」と述べた。