[東京 7日 ロイター] – 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は7日、東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出が国際的な安全基準に合致していると結論付けた報告書について、携わった専門家チームの1人か2人は懸念の声を上げた可能性があると明らかにした。
ロイターのインタビューで、4日発表の報告書について専門家の間で意見の相違はなかったのかという質問に「あったと聞いている。ただ、われわれが公表したものは科学的に非の打ちどころがない」と語った。
報告書にはオーストラリア、中国、フランス、韓国、米国などの専門家11人が関わった。
グロッシ氏は、同氏に直接懸念を伝えてきた専門家はいなかったと説明。意見の相違についてどのように聞いたかは詳しく述べなかった。
中国共産党系メディアの環球時報は6日、IAEA作業部会の中国の専門家、Liu Senlin氏が性急な報告書作成に失望していると伝えた。専門家からのインプットは限られ、参考程度にしか使われなかったと述べたという。
グロッシ氏は、IAEAの報告書は処理水の海洋放出計画を認めるものではなく、日本政府が最終決定を下さなければならないとも発言。
「IAEAは計画の承認も推奨もしていない。計画が基準に合致していると判断した」とし、「IAEAは日本の味方でも、中国の味方でも、韓国の味方でもない。基準は全てに同じように適用される」と述べた。
今回の放出計画と同じような例は過去にないため懸念は理解できるとしつつ、批判には「ある種の政治的意図」もあると述べた。詳細には踏み込まなかった。
<「国境越える影響ないことも」>
その後記者会見したグロッシ氏は、報告書はコンセンサスによって形成されたものではなく、諮問を受けた科学専門家らは「個人的な意見を持っているかもしれないし、持っていないかもしれない」と述べた。
専門家は報告書の内容に満足しているのかとの質問に対しては「間違いなくイエスだ。もしそうでない人がいれば、そう言うべきだ」と答えた。
また、放出される水に含まれる放射性核種のレベルが低いことを考えると、日本の海岸から数マイル離れたところでは放射性核種は識別できないかもしれないと説明。「国境を越える影響は全くないということもあり得る」と語った。
一方、中国外務省の汪文斌報道官は7日、IAEAの報告書は「評価に関わった全ての専門家の意見を完全に反映したものではない」とし、その結論は「限定的で一方的」だと述べた。