【ジャカルタ時事】13、14両日にかけてジャカルタで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)と域外国との外相会議では、米国と中国が神経戦を繰り広げた。東南アジアは米中競争の「主戦場」の一つとされており、米中双方は積極的な外交攻勢でASEAN各国の取り込みを図った。
◇王氏の存在感
先手を取ったのは中国外交トップで前外相の王毅共産党政治局員だ。ASEAN外相会議で「デビュー」を飾るはずだった秦剛国務委員兼外相が「体調」を理由に欠席すると、「代打」としてブリンケン米国務長官に先立ってジャカルタを訪問。13日からASEAN各国との外相会議などの外交日程を精力的にこなした。
王氏は外相会議でASEANの一部加盟国との領有権争いが続く南シナ海問題を巡り、紛争回避に向けた「行動規範」の策定交渉を加速させることで一致。中国の「無責任な行動」(米高官)に対抗するためASEAN各国との協力を目指していた米国の機先を制した。
王氏は外相会議で「(ASEANへの)干渉の排除と発展を支援する」「反グローバル化とデカップリング(中国切り離し)に抵抗する」などと述べ、ASEAN接近を図る米側を強くけん制。南シナ海に関して「大国のチェス盤ではない」と述べるなど、外相として繰り返し出席した舞台で「ベテラン」の存在感を見せつけた。
◇ASEAN重視の米
「今回でインド太平洋に12回訪れ、インドネシアを4回訪問し、ASEAN外相会議には3回出席したことになる」。ブリンケン氏は14日、ASEAN各国との外相会議の冒頭でこう語り、ASEANとの関係を重視するバイデン米政権の姿勢を強調した。
バイデン大統領の欧州歴訪に同行していたブリンケン氏は、ジャカルタでの最初の外交日程として13日夜、王氏との会談に臨んだ。約90分にわたり行われた協議では台湾問題で応酬し、南シナ海での中国の海洋進出の動きを念頭に「米国や同盟・友好国が抱える懸念」を取り上げ、王氏と激しい議論を交わした。
インドネシアのルトノ外相は14日、米中も参加する東アジアサミット(EAS)外相会議で「インド太平洋地域では『冷戦』の兆候があると指摘する人もいる」と述べ、大国間の対立に巻き込まれることへの懸念を表明。ASEAN各国は米中との難しい間合いを迫られている。