[東京 28日 ロイター] – 日銀は28日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2023年度の消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)の見通しを前年度比プラス2.5%と前回(同プラス1.8%)から大幅に引き上げた。価格転嫁が想定を上回って進んでいるとした。
一方、24年度の見通しは、同プラス1.9%と前回(同プラス2.0%)から小幅に引き下げた。見通しに対するリスクは23年度、24年度ともに「上振れリスクの方が大きい」とした。25年度はプラス1.6%で据え置いた。
日銀はコアCPIについて、過去の輸入物価の上昇を受けた価格転嫁の影響が弱まる中でプラス幅を縮小した後、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみている。
生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIの見通しは、23年度を前回のプラス2.5%からプラス3.2%へ大幅に上方修正した。24年度の見通しはプラス1.7%、25年度はプラス1.8%で変更はなかった。
景気の現状認識については「緩やかに回復している」とし、前回の「既往の資源高の影響などを受けつつも、持ち直している」から前進させた。「回復」の文言が復活したのは、2017年3月会合以来。今後は海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて緩やかな回復を続けるとみている。
経済・物価の見通しに対するリスク要因として、海外の経済・物価動向や資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動などを挙げ、日本経済・物価を巡る不確実性は「きわめて高い」と指摘。金融・為替市場の動向や、それが日本経済・物価に与える影響を十分注視する必要がある」とした。
<企業の価格・賃金設定行動、物価固有のリスク要因に>
物価見通しに対する固有のリスク要因としては、前回と同様、企業の価格・賃金設定行動と、為替変動や国際商品市況の動向などを挙げた。
企業の価格・賃金設定行動は「上下双方向に不確実性が高い」とした。今後の原材料コストの上昇圧力や企業の予想物価上昇率の動向次第では価格転嫁が想定以上に続き、物価が上振れる可能性があるという。
一方、資源・穀物価格が総じて下落する中、中長期の予想物価上昇率が低下し、企業の価格設定行動に影響が及ぶ可能性がある。物価や賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残り続ける場合、来年以降賃上げの動きが想定ほど強まらず、物価も下振れる可能性があるとした。
(杉山健太郎)