ブラックホール周囲のガスが噴水のように循環している銀河中心部の想像図(ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Izumi et al.)
コンパス座銀河の中心部を捉えた観測画像。拡大して解析すると、円盤状のガス(緑)と噴き出すガス(ピンク)が見えた(ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Izumi et al.)
巨大ブラックホール周囲にあるガスの動きを高解像度で観測することに成功したと、国立天文台や鹿児島大などの国際チームが発表した。ガスの大半は、ブラックホールに吸い込まれる直前に吹き飛ばされ、再び円盤に戻っていた。ブラックホールが成長する仕組みの解明につながる成果だという。論文が3日、学術誌サイエンスに掲載される。
多くの銀河の中心部には巨大ブラックホールがあり、周囲を円盤状に取り巻くガスを重力で吸い込むことで巨大化すると考えられている。チームは、ガスの動きを把握しようと、南米チリの電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」で、地球から約1400万光年と比較的近い「コンパス座銀河」の中心部を観測。ガスが円盤構造を壊しながらブラックホールへ吸い込まれる様子を捉えた。
解析の結果、ガスはブラックホール周囲で発生するエネルギーを受けて外側に噴出し、吸い込まれて成長に使われるガスは3%未満と想定より少なかった。噴出したガスは、ブラックホールの重力圏から脱出できず円盤に戻る動きを繰り返していた。
観測した国立天文台の泉拓磨助教は「ガスが噴水のように循環していることが初めてわかった。ブラックホールの成長メカニズムの解明につながる」と話す。
大須賀健・筑波大教授(宇宙物理学)の話「噴出するガスは星の材料にもなりうる。ブラックホール周囲のガスの動きが銀河進化に関与している可能性も示す成果だ」