【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)が、インフレの鈍化を踏まえ、利上げ局面の終了を模索し始めたもようだ。ただ、物価上昇率は目標の2%を依然として上回る。底堅い個人消費などを受けたインフレ再燃のリスクも残っており、FRBは経済指標をにらみ、慎重に政策を判断する構えだ。
米利下げ観測「時期尚早」 インフレ抑制に取り組む―FRB議長
「時期尚早だ」。パウエルFRB議長は1日の講演で、市場で広まる利上げ打ち止めや、早期利下げを巡る観測をけん制した。しかし、パウエル氏の発言もさほど響かず、市場ではFRBが来年3月の会合で、早くも利下げに転じるとの見方が浮上している。
背景にあるのは、インフレ率の順調な低下だ。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は10月、前年同月比3.0%上昇した。上昇率は昨年6月(7.1%)のピークから大きく下がり、2021年3月以来2年7カ月ぶりの低水準を記録。FRB内では、インフレ率が「2%に向かっている」(高官)と、物価安定の回復を楽観する声も出てきた。
一方、景気や雇用情勢には鈍化の兆しが見えているとはいえ、なおも堅調さを保つ。旺盛な消費が「インフレ圧力をもたらし続ける」(ボウマン理事)と、警戒論も根強い。
インフレや景気の先行きに不透明感が漂う中、パウエル氏は「正しい行動は慎重に動き、考えることだ」と強調。「(金融引き締めを)十分行ったのか、もっと必要なのかを指標が示す」と述べた。追加利上げの可能性を残しつつ、経済動向を見極める必要性を訴えた。