【ドバイ時事】日本の研究チームなどは8日までに、モンゴル政府の計算した二酸化炭素(CO2)排出量の正確性を、日本の人工衛星「いぶき」の観測データを使って検証することに成功した。世界初の取り組みで、モンゴル政府はこうした経緯を盛り込んだ報告書を11月に国連へ提出している。
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いぶきは、環境省や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが開発。宇宙から大気中の温室ガス濃度を高精度かつ広範囲で測定する。1機目は2009年に打ち上げられ、現在は18年から運用中の2機目と共に観測を続けている。3機目の打ち上げも計画されている。
モンゴル政府が提供したエネルギー部門のCO2排出量と、いぶきの観測データを用いて日本チームが推計した同部門の排出量を比較したところ、差は1.5%と小さかった。検証に関わった中央大学の渡辺正孝教授(地球環境学)は「非常に高い精度でモンゴルの排出量を検証できた」と話す。
モンゴルのバトジャルガル前気候変動特使も取材に応じ、「衛星の観測データは気候変動の要因をモニタリングするのに有用。地理的条件が似た他の国でも活用できる」と評価している。
日本政府は途上国の温室ガス排出量の測定を支援している。委託先の研究チームはモンゴルやウズベキスタン、カザフスタンと協力覚書を交わし、いぶきの観測データを提供している。
8日には、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の会場内で、この研究チームがタジキスタンと覚書を締結した。日本は協力関係をインドやタイにも広げる意向だ。