受賞の喜びを語るスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー(11日、東京都小金井市で)
視覚効果賞の「ゴジラ‐1.0」バックステージ会見の動画はこちら
【ロサンゼルス=木村直子、後藤香代】日本が誇る特撮作品とアニメが、ハリウッドを揺るがした。10日(日本時間11日)にロサンゼルスで行われた第96回米アカデミー賞の発表・授賞式で、日本の2作品が世界の強敵を破って同時受賞する快挙を果たした。
アカデミー15年ぶりダブル受賞、「ゴジラ」山崎貴監督「ハリウッドが視覚効果に挑戦権あること証明」
授賞式後のイベントに参加した山崎貴監督(右)とVFXディレクターの渋谷紀世子さん=AP
授賞式会場で「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」の視覚効果賞受賞が告げられると、山崎貴監督(59)らは歓喜して立ち上がり、ゴジラのフィギュアを手に登壇した。脚本とVFX(視覚効果)も手がけた山崎監督は「40年以上前に『スター・ウォーズ』と『未知との遭遇』を見たショックからキャリアをスタートさせた私にとって、この場所は望むことすら想像しなかった場所でした」と英語のスピーチで喜びを表した。
「ALWAYS 三丁目の夕日」や「STAND BY ME ドラえもん」などで、コンピューターグラフィックス(CG)作品の国内第一人者として名をはせてきた山崎監督。ついに世界の壁を破り、「日本の映画が海外でも興行できるようになれば、日本の映画の可能性も高まる」と、授賞式後の記者会見でも力強く語った。
宮崎駿監督は「興奮していました」
一方、長編アニメーション賞受賞の「君たちはどう生きるか」を製作したスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー(75)は東京都小金井市の同社で11日、記者会見を開き、「本当に心の底から喜んでましたね。興奮していました」と、電話でやり取りをした宮崎駿監督(83)の様子を明かした。
2013年に一度、引退宣言をしたが、今作の製作にあたり、宮崎監督は「みっともないんだけど、もう1本作りたい」と鈴木さんに切り出したといい、7年がかりで作品を完成させた。鈴木さんは「色んな人にどうやって受け取られるんだろうと、彼はいつも以上に心配が大きかったんですよ」と語った。
最多7部門に輝いた「オッペンハイマー」は第2次世界大戦下、原爆開発計画で中心的な役割を果たした米物理学者ロバート・オッペンハイマー博士(1904~67年)の伝記映画だ。秘密裏に進められた計画の過程や、原爆投下後の広島と長崎の惨状について報告を受け、博士が葛藤する様子などが描かれている。日本では29日から公開予定。
映画評論家の渡辺祥子さんは「『オッペンハイマー』をはじめとして、今年の受賞作は戦争、反戦と結びついていた。戦中を描いた『君たち』、戦後が舞台の『ゴジラ』の受賞にも少なからず影響しただろう」と話す。
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