岸田総理が近くパーティー券疑惑を招いた自民党の関係者を処分するという。もちろん党総裁としての処分であり、言ってみれば極めて私的な処分だ。政治資金規正法違反という立派な法律違反を犯しているのだから、本来なら国家がきちんと処分すべきだが、検察は違反に関わった派閥の会計責任者を処分しただけ。一部の国会議員は起訴したものの、これは例外中の例外。証拠隠滅を図ったことが発覚して処分されたに過ぎない。今回の件で検察はそういう意味では誰一人処分していないのだ。昨年末、全国から検察官を集め、あれだけの大騒動を展開した上での処分見送り。これは法律違反をさばく検察の“大失態”だが、誰もその責任を問わない。その代わりに自民党総裁が検察に代わって法律違反者を裁くことになったわけだが、これが何をやろうとしているか支離滅裂。

自民党を会社組織に例えればわかりやすい。会長兼社長、C E Oも兼務する総裁である岸田総理が、野党に責められて嫌々処分に踏み切る。その実態は野党の追及を理由に、自らの権力基盤を維持しようとする自民党内の権力闘争以外のなにものでもない。この手の問題が起こった時企業は、まず自らの管理責任を問い会長・社長が引責辞任するのが常。事件を起こした担当者の処分を自ら行うか後任に託すか、選択肢は分かれるがそれはどちらでも構わない。引責辞任を表明することでとりあえず株主は納得する。岸田総理の場合ここが完全に欠落している。裏金づくりの責任者は誰か、問題の本質を解明しないまま、説明責任と称して不正に関わった関係者に解明努力を“促す”だけ。この指導力のなさに剛を煮やした野党は、岸田首相に関係者の処分を求める。野党も野党なら総理にもまったく筋がない。これを逆手にとって権力維持に利用する。これが岸田総理の戦術だ。

この人は意外にずるい。そのうえ、したたかだ。支持率が歴史的な低水準にありなが時々含み笑いを浮かべる。まるで党内の権力闘争を楽しんでいるかのようだ。この闘争に百戦錬磨の二階氏が敗れる。次期衆院選挙に立候補せずと表明した。だがこれが「負けて勝つ」戦術であることを岸田氏は理解しているのだろうか。派閥の解散をいち早く表明した時と一緒だ。機先を制したのだ。だが物事には「後の先」というのがある。負けたふりをしながら勝つのだ。自民党の会長・社長、C E Oも兼務する岸田総裁の責任はどうなる。政治家個人の判断に委ねるとい高等戦術が、ブーメランのように岸田総理に襲いかかるはずだ。宏池会の会長だったこともあり、総理は本来なら引責辞任し、ことの重大さに鑑み自ら次回の出馬を断念する。これなら有権者も少しは納得するだろう。同じ構造が北朝鮮とのトップ会談にもチラチラする。「前提条件なし」だ。これも大問題だ。

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