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連邦捜査当局が水原氏を銀行詐欺罪で起訴したことを発表。生々しい窃盗の実態が明らかになった(写真・AP/アフロ)

米国連邦捜査当局は11日(日本時間12日)、ドジャースの大谷翔平(29)の元通訳の水原一平氏(39)を大谷の銀行口座から1600万ドル(約24億5000万円)以上を盗み、違法なスポーツ賭博への「飽くなき欲求」のための資金調達に充てた銀行詐欺の罪で起訴したと正式に発表した。複数の米メディアが報じたもので、水原氏は、総額で1億8000万ドル(約276億円)以上を失い、差し引き4060万ドル(約62億円)の借金を作った。またドジャースのクラブハウスに大谷の口座を使って購入した約5000万円相当の野球カードを郵送するなどの大胆な手口も明らかになった。

【全文掲載】大谷翔平が水原一平氏の解雇と野球賭博の借金肩代わり疑惑に答える

 連邦捜査当局が銀行詐欺罪で水原氏を起訴したことを発表。訴状には、水原氏の宣誓供述書もあり違法なスポーツ賭博で作った借金を返すために大谷の口座からどうやってお金を盗んだかという悪質な手口や報道されているより遥かに大きい金額を賭けていたという新事実が明らかになった。

 米サイト「フロントオフィススポーツ」が、連邦捜査当局の発表として報じた記事によると、水原氏は、2021年から今年の1月にかけて、1日に数十回、最終的に1万9000回以上の賭けを行っていた。1回あたりの平均で1万2000ドル(約184万円)以上を賭け、1億4000万ドル以上(約214億円)は勝ったが、1億8000万ドル(約276億円)以上は負けて、違法なブックメーカーのマシュー・ボウヤー氏に差し引き4060万ドル(約62億円)の借金を作った。そのうち1600万ドル(約24億5000万円)以上を大谷の口座から盗んだ。

 最初の送金は2021年11月の4万10ドル(約613万円)。1500万ドル以上(約23億円)になる送金の大部分は、2022年と2023年に行われた。

 大谷の銀行口座の連絡先は、水原氏の電話番号と水原氏に関連する匿名のメールアドレスに紐づくように変更されている。水原氏は、銀行に電話をかけ、大谷と偽って銀行員を騙し、大谷の銀行口座から違法賭博関係者への電信送金を承認させた。

 水原氏は、当初、口座へのアクセスを拒否された。大谷の自動車ローンを送金すると言い張ったが、口座はロックされた。しかし水原氏は、口座のセキュリティーの質問に答えることに成功し、大谷の数百万ドルの口座を解除した。大谷の資産を管理していた経理や金融顧問は、大谷が口座に関連して税金の問題を抱える懸念があったにもかかわらず、水原氏は利用していた口座を「大谷のプライベートなものだ」と彼らに伝えてアクセスできないようにしていたという。

 訴状では、水原氏と、違法ブックメーカーを運営していたボウヤー氏の生々しいメールのやりとりも記録されている。

 水原氏の借金が重なり、違法賭博の胴元の一人は、南カリフォルニアの周辺で大谷を尾行していたという。

 ボウヤー氏は「ヘイ、イッペイ。今、金曜日の2時だ。私の電話になぜ返事をしないのか分からない。今ニューポートにいて(大谷が)犬と歩いているのが見える。彼に近づいて“水原氏から返答がないんだけど、どうやって連絡を取ればいいか”と聞けばいいかい?どうかすぐに電話をかけ直してほしい」と、大谷にバラすぞという脅しのようなメールを送っている。

 それは大谷が、愛犬のデコピンを飼いだしてドジャースと契約を結ぶ前の大事な時期だったという。その2日後、水原氏は「借金の一部を帳消しにしてもらえないか?」と懇願する返答をした。「正直に言うが、この数年で仮想通貨で多くのお金を失ってしまい、このスポーツ(賭博)でも大損をした」と言い訳したという。

 困った水原氏は、大谷のドジャース移籍決定後の2024年1月から2024年3月にかけて同じ口座を使ってeBayやWhatnotで約1000枚の野球カード(約32万5000ドル相当=約5000万円)や記念グッズを購入し、大胆にも「ジェイ・ミン」という偽名でドジャースのクラブハウス宛に郵送させている。水原氏は、信用賭けのクレジットの増額と、負けを取り戻そうと賭け金の上限の引き上げを執拗に求め、その担保として約5000万円相当の野球カードを所有していることを伝えたという。

 だが、ESPNやロサンゼルスタイムズ紙が、大谷の口座から違法ブックメーカーへの送金があるとの情報をつかみ取材に動き、3月19日には水原氏がESPNのインタビューを受けるに至った。

 ボウヤー氏は、水原氏に「あなたは大谷からお金は盗んでいない」とテキストメッセージを送ったが、水原氏は「厳密に言えば私は彼からお金を盗んだ。もう私は終わりだ」と切実なメッセージを返したという。

 もう隠し通せないと覚悟を決めた水原氏は、この翌日に韓国で行われた開幕戦後のミーティングで全選手に吐露。その後ホテルで大谷と1対1で会ってすべてを告白している。

 また当局は「大谷氏が自分の口座からブックメーカーに1600万ドルを送金することを許可した形跡はない。大谷は被害者と考えられる」とも述べ、大谷が今回の問題の被害者であることを強調した。大谷は2、3日に事情聴取を受けて水原氏に電信送金を許可したことなどないと証言し自らの携帯電話を法執行機関に提出した。当局が、その履歴などを調査したところ、大谷が水原氏の違法賭博行為や借金の支払いを認識していた、あるいは関与していたことを示す証拠はなかったと判断した。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、水原氏の弁護士であるマイケル・フリードマン氏と連邦検察官が司法取引の交渉をしており、早ければ12日(日本時間13日)にもロサンゼルスの連邦裁判所で罪状認否が行われる予定だという。