▽情報BOX:トランプ氏の口止め裁判、選挙戦に影響出るのか<ロイター日本語版>2024年5月23日午前 11:56 GMT+9

By Tim Reid

情報BOX:トランプ氏の口止め裁判、選挙戦に影響出るのか

[ワシントン 22日 ロイター] – ドナルド・トランプ前米大統領が自身の不倫の口止め料を不正に処理したとして、米大統領経験者として初めて刑事責任を問われている裁判は、陪審員が早ければ来週にも評決を下し、その結果が今年の米大統領選に大きな影響を及ぼす可能性がある。

トランプ氏は2016年の選挙直前、不倫関係にあったと主張するポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんへの口止め料支払いを隠蔽するために業務記録を改ざんしたとして34件の罪に問われ、無罪を主張している。

トランプ氏はこのほか、20年の米大統領選で敗北したジョージア州などでの結果を覆そうとした罪や、大統領退任後に機密文書を持ち出した罪などで計4つの訴訟を起こされている。不倫口止め裁判は、この中で最も選挙戦への影響が小さいとの見方が一般的だ。

しかし、共和党大統領候補指名が確実なトランプ氏は過去数週間、この裁判に時間を取られ、選挙運動に費やすよりも法廷にいる時間の方が長い。しかも、不倫口止め裁判は11月の本選前に審判が下る可能性がある唯一の訴訟だけに注目度は高い。

口止め裁判が選挙戦に与える影響を、有罪、無罪、審理無効のそれぞれのケースについて分析した。

<有罪の場合>

有罪評決は、一握りの激戦州における数万票の得票差が決定打になり得る大統領選で、トランプ氏にとって重大な政治的危険をもたらす恐れがあることが、世論調査から読み取れる。

4月のロイター/イプソスの世論調査によると、共和党員の4人に1人が、刑事裁判で有罪が確定すればトランプ氏に投票しないと回答し、無党派層の60%はトランプ氏が有罪判決を受けたら票を入れないと答えた。

有罪評決の影響について、共和党と民主党のコンサルタントの見解は割れている。

共和党の世論調査担当者のウィット・エアーズ氏は、トランプ氏が有罪評決を受けた場合に共和党員がこれほど高い比率でトランプ氏への投票を見送ることは実際にはないと見ている。

ただ、少数とはいえ穏健派共和党員や無党派層が有罪評決によってトランプ氏への投票を見送れば、接戦の選挙ではバイデン氏にとって追い風になるかもしれないという。

エアーズ氏は、民主党の検事が検察側を率い、法的に未検証な戦略に則っているというこの裁判の性質は、有罪は政治的動機に基づくというトランプ陣営の主張の形成にプラスに働くとも見ている。

共和党コンサルタントのトリシア・マクラフリン氏は、トランプ氏は負けず嫌いの性格なので、有罪なら心理的な影響を受けるだろうと指摘。また、有罪評決が下れば控訴がほぼ確実で、より多くの資金を訴訟費用に振り向けることになると予想した。

一方、ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所のアナリスト、ビル・ガルストン氏は、有罪評決が大統領選に大きな影響を与えるとは見ていない。

「結局のところ、この訴訟はセックス絡みの虚偽を問題にしている。米国市民の大多数は、誰でもセックスについてはうそをついていると思っている」と言う。

<無罪の場合>

無罪評決が出ればトランプ氏にとっては大きな勝利になるとの見方で、政治コンサルタントの見方は一致している。トランプ氏は、この裁判は自身の大統領選出馬を頓挫させるために仕組まれた政治的迫害だと主張しているからだ。

無罪評決をテコに、トランプ氏は選挙戦で他の裁判も法的に無意味だと主張することができる、とマクラフリン氏は指摘。「トランプ氏にとっては格好の材料になる。『私は偽りの、魔女狩り裁判に勝利した。他の裁判でも同じことが起こる』という主張を展開するだろう」と述べた。

ロイター/イプソスは、無罪評決が有権者の見方にどう影響するかについては世論調査を行っていない。

民主党コンサルタント、カレン・フィニー氏は、トランプ氏の熱心な支持者は「無罪評決が出れば無実が証明され、正当性が立証されたと感じるだろう」と言う。

ただ、裁判の証言によって明らかになったおぞましい事実や、この裁判の核となっているトランプ氏がポルノ女優への口止め料支払いを工面したという事実は、たとえ陪審員が無罪と判断したとしてもトランプ氏にとってダメージになるだろうと指摘した。

<審理無効の場合>

専門家によると、陪審員12人が全員一致の評決に合意できなければ評決不能となり、裁判官は無効審理を宣言せざるを得ない。

政治コンサルタントやアナリストの見立てでは、トランプ氏は審理無効を勝利とみなすだろうが、無罪評決のような正当性の立証は得られそうもない。

共和党コンサルタントのジョン・フィヘリー氏は、審理無効となればトランプ氏はメディアに取り上げられ続ける状況に区切りが付けられるが、「無罪証明書」は得られないと述べた。

民主党コンサルタントのフィニー氏は、評決がどうであれ、トランプ氏は裁判長によるかん口令から解放され、裁判が終わればトランプは敵と思われる人物に対してさらに厳しい言葉で怒りをぶつけるだろうと予想する。

審理無効であっても、この訴訟で低俗な事実が公になっており、少なくとも何人かの陪審員はトランプ氏が有罪だと信じていたことが有権者に伝わることにもなるという。

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