Rita Nazareth

  • S&P500種とダウ平均、リアルタイム表示が一時中断
  • 原油続落、在庫が大幅減も売り優勢-OPECプラス会合待ち

30日の米株式相場は続落。経済指標が景気鈍化を示唆したため、株売り・国債買いが優勢になった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5235.48-31.47-0.60%
ダウ工業株30種平均38111.48-330.06-0.86%
ナスダック総合指数16737.08-183.50-1.08%

  米金融当局がインフレ目標の基準とする個人消費支出(PCE)価格指数の発表を翌日に控える中、1-3月(第1四半期)の米実質国内総生産(GDP)改定値は速報値から下方修正となった。景気の冷え込みは当局が年内に利下げに踏み切る余地があることを意味する。しかし、消費や企業収益にとっては懸念材料となり得る。

米GDP、1-3月は1.3%増に下方修正-個人消費の伸び鈍化

  インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)のクリス・ザッカレリ氏は「この日の経済指標はもろ刃の剣だ」と指摘。「株価を押し上げる上で最も重要なのは景気であり、金利低下ではないというのが当社の長年の考えだ。金利が今より下がれば景気は後退を免れる可能性が高いものの、最終的に中長期的に最も重要なのは景気拡大であり、企業収益の継続だ。そのため、すべての条件が同じであれば、両者はもちろん相互に関連している」と述べた。

  ザッカレリ氏の今年の基本シナリオは、インフレが比較的根強く、米金融当局が2024年の全てではないにしろ、そのほとんどで様子見を続けるが、景気拡大は続き、企業利益は増加を続けるというものだ。

  同氏は「そのため、株式は時より下げることがあっても、強気相場が続くだろう」と語った。  

  S&P500種株価指数は5235付近に下落。ナスダック100指数は1%下げた。エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)による中東向け人工知能(AI)アクセラレーター出荷に対し、米政府当局者はライセンスの発行を遅らせている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。クラウドベースの顧客管理(CRM)ソフトウエアを手掛けるセールスフォースは20%安。前日夕に5-7月(第2四半期)の売上高の伸びが過去最も低調になるとの見通しを示したことが嫌気された。

セールスフォース株急落、増収率で初の1桁台見通し-存在感巡り懸念

  S&P500種とダウ工業株30種平均は午前に、約80分にわたってリアルタイムの価格変動表示が中断された。ただ、個別株と上場投資信託(ETF)はこの期間、正常に価格表示されていた。

S&P500種のリアルタイム価格表示が一時中断、混乱は最小限 

S&P 500 Live Pricing Briefly Interrupted by Glitch

  米国債は上昇。景気減速を示す経済指標が買いを誘った。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、今年下期にインフレ率の低下が続くとみていると述べた。借り入れコストの高止まりが経済を抑制しているとの見方も示した。

NY連銀総裁、金融政策が景気を抑制している「証拠は十分ある」 

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.68%-5.1-1.09%
米10年債利回り4.55%-6.4-1.38%
米2年債利回り4.93%-4.6-0.92%
  米東部時間16時33分

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「焦点は依然としてインフレと金利であり、GDPが予想通り下方修正されたにもかかわらず、この日の経済指標は現状を揺るがすようなものではほとんどなかった」と指摘。「あすのPCE価格指数は注目材料で、来週7日の雇用統計まで市場心理を支配する可能性がある」と述べた。

  外国為替市場ではドル指数が2週間ぶりの大幅安。月末を控えたポジション調整とヘッジの動きが支配的となる中、前日の上昇分の大半を失った。

  円は対ドルで一時、1ドル=156円38銭まで上昇した。クロス通貨に絡んだ円買いや月末特有のドル売りに加え、オプションの乗り換えや米国債利回りの低下が寄与した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1252.19-2.90-0.23%
ドル/円¥156.88-¥0.76-0.48%
ユーロ/ドル$1.0830$0.00290.27%
  米東部時間16時33分

  ニューヨーク原油相場は続落。米在庫は5週間ぶりの大幅減少となったものの、価格はプラス圏に浮上しなかった。トレーダーらは今後の供給を見極めようと、6月2日のOPECプラス会合を待っている。

  先週の米原油在庫は416万バレル減少。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の中央値は115万バレルの減少だった。

  北海ブレント原油のプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は、1月以来の順ざやになった。供給超過の不安があおられ、価格をさらに下押しした。

Brent Weakens into Contango on Ample Supply | Brent's prompt spread narrows to smallest since early January
北海ブレント原油のプロンプトスプレッド出所:ICE

  今週の原油相場は相反する圧力に挟まれ、方向がつかみにくい展開。高金利が長期化するとの懸念が根強い中で株価が下げ、それを商品相場が追っている。こうした弱気のセンチメントを、紅海での商船攻撃や、ハマス制圧は年末以降になるとしたイスラエル当局者発言を受けて地政学的な懸念が相殺している格好。

  今年の原油相場は地政学的なリスクとOPECプラスによる減産に押し上げられてきた。OPECプラスは週末の会合で、この1カ月の価格下落や、中国での需要低下見通し、米州での健全な供給など複数の要素を考慮する可能性が高い。

OPECプラス、来年への減産延長も視野に-サウジなど非公式協議

  トータス・キャピタル・アドバイザーズのマネジングディレクター兼ポートフォリオマネジャー、ブライアン・ケッセンス氏は「原油サイドの全体的な在庫減少は非常に健全なものだ」と指摘。「やや強気材料ではある。しかし市場はまだ週末のOPEC会合を待っている状態だ。これを通過すれば市場にはある程度の透明性が加わるだろう」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比1.32ドル(1.7%)下げて1バレル=77.91ドル。ロンドンICEの北海ブレント7月限は2.1%安い81.86ドル。

  ニューヨーク金は反発。スポット価格はニューヨーク時間午後3時30分現在、前日比2.71ドル(0.1%)高の1オンス=2340.83ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は2.40ドル(0.1%)上昇し2366.50ドルで終了した。

原題:Tech Rout Hits Stocks as Treasuries Gain After GDP: Markets Wrap(抜粋)

Dollar Sinks Amid Month-End Flows, Carry Unwinds: Inside G-10

Oil Falls as Traders Fear Oversupply Ahead of OPEC+ Meeting