▽イスラエル、ハマス壊滅まで戦闘継続の決意-バイデン氏の発言に反発<ロイター日本語版>2024年6月3日 0:55 JST

  • ハマス破壊と全人質の解放、ガザの脅威除去が前提-ネタニヤフ首相
  • イスラエルで強まる終戦圧力、大統領や前首相はバイデン氏を評価
An Israeli army tank takes position in an area of Israel's southern border with the Gaza Strip on June 2.
An Israeli army tank takes position in an area of Israel’s southern border with the Gaza Strip on June 2. Photographer: MENAHEM KAHANA/AFP

バイデン米大統領が「イスラエル発」として5月31日に発表したイスラム組織ハマスとの停戦案は、重要な点がイスラエルのネタニヤフ首相の賛同を得ていないことが明らかになった。

  パレスチナ自治区ガザでの戦争が8カ月目に入ろうとする現在も、人質と囚人の交換を巡る行き詰まりは変わっていない。ハマスが統治を続け、軍事的機能を維持する限り、戦闘を一時停止しても終わらせることはないというのがイスラエルの立場だ。一方のハマスは恒久的な停戦が保証されない限り、人質は解放しない方針だ。

  イスラエルはすでにハマスに十分な打撃を加え、昨年10月7日のような攻撃は不可能になったというのが、バイデン大統領の考えだ。ハマスは当時、約1200人のイスラエル人を殺害し、約250人を人質とした。バイデン氏は今こそ戦争を終わらせ、人質を解放し、ガザ地区の再建に着手するべきだと述べた。

  一方のネタニヤフ政権は、10月7日に起きた同国史最悪の虐殺が繰り返されるかどうかという基準自体が間違っていると考えている。米国と欧州連合(EU)がテロリスト集団に指定するハマスから、あらゆる攻撃能力を取り上げる必要があり、その目的が達成されるまでイスラエルは攻撃をやめないというのが、ネタニヤフ政権の変わらない立場だ。

バイデン大統領、ハマスとイスラエルに停戦訴え-3段階の工程表 (1)

  ハマスは「恒久的な停戦への呼びかけ」など、バイデン氏のホワイトハウスでの演説内容を「前向きに捉えている」とコメントした。

  イスラエル当局者によれば、政府が合意した計画には恒久的な停戦は含まれない。ネタニヤフ首相は今週末、バイデン大統領の発言と矛盾する声明を2本発表した。 

  最初の声明は、ガザに残っている100人余りの人質解放を目的とした案を提示する権限を交渉官に与えたが、その提案というのは「ハマスの軍事・統治能力の破壊を含め、イスラエルがすべての目的を達成するまで戦争を継続することを可能にする」ものだとしている。

  2本目の声明は「戦争終結の条件は変わっていない。ハマスの軍事・統治能力の破壊と、全ての人質解放、ガザの脅威を確実に取り除くことだ」と、より具体的な内容になっている。

  こうした条件が満たされない限り、イスラエルが恒久的な停戦に同意することは「あり得ない」という。

  イスラエル国内では戦争を終結させてでも人質解放で合意するよう、政府への圧力が高まっている。ヘルツォグ大統領や野党指導者のラピド前首相はバイデン氏の演説に賛同を示している。毎週行われている戦争終結を訴えるデモは、10万人を超える規模に膨れ上がった。イスラエル交渉団からリークされた情報では、一部メンバーは人質全員の解放と引き換えに戦闘を終わらせることを受け入れる方向に傾いている。

原題:Israel Pushes Back Against Gaza Cease-Fire Outlined by Biden(抜粋)

▽イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマスも「前向き」<ロイター日本語版>2024年6月1日午前 6:56 GMT+9

イスラエル、新たな休戦案を提示 米大統領が発表

[ワシントン/エルサレム 31日 ロイター] – バイデン米大統領は31日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザを巡り人質解放と引き換えに戦闘休止を提案したと明らかにし、イスラム組織ハマスに対し新たな提案に同意するよう呼びかけた。

ハマスは同提案を「前向きに」受け止めていると表明した。

バイデン大統領が明らかにした新たな提案は3段階で構成。第1段階は6週間の戦闘休止で、この期間はイスラエル軍はガザから撤退し、高齢者や女性を含む人質が数百人のパレスチナ囚人と交換される。

第2段階でハマスとイスラエルは敵対行為の恒久的停止の条件について交渉。バイデン大統領によると、交渉が続く限り戦闘休止は継続される。第3段階でガザ地区の大規模な復興計画などを策定する。

バイデン大統領によると、この提案はカタールを通してハマスに伝えられた。

これを受けイスラエル首相府は、政府が交渉担当者にガザ停戦合意を提示する権限を与えたとする声明を発表。同時に「人質全員の帰還とハマスの軍事、政治力の破壊を含む全ての目標が達成されるまで戦争は終結しない」とも表明した。

米当局者によると、この計画では、各段階は42日間続くことになる。

一方ハマスは、イスラエル側が明確に合意へのコミットメントを表明すれば、恒久的な停戦やガザ地区からのイスラエル軍の完全撤退、ガザの再建、避難民の帰還、人質交換合意の履行に基づくあらゆる提案に前向きかつ建設的な態度で対応する用意があるとの意思を表明した。

この立場表明は、ハマスの方針転換を示している。

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