Nina Trentmann
- S&P500種構成の非金融企業、約1割は利子収入が利払い上回る
- 中でもエヌビディアは突出、利子収入で配当金9800万ドルを賄う
米企業の最高財務責任者(CFO)は数十年ぶりの高水準にある金利の恩恵により、「金が金を生む」ことを実感している。
S&P500種株価指数を構成する非金融企業のうち、約1割が債務コストを上回る利子収入を1-3月(第1四半期)に計上した。金利コストを公表している指数構成企業を対象にブルームバーグがデータをまとめた。この割合は前年並みだが、アルファベットやテスラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)を含むこれらの企業が得た利子収入は約60%増加した。
米企業の手元資金は新型コロナウイルス禍で膨らんだ。米政策金利が現在5%を超える中、マネー・マーケット・ファンド(MMF)や米国債、譲渡性預金(CD)に手元資金を振り向けることで、米企業はより高い収益を得ている。米金融当局は長期間にわたり高金利を維持する意向を示しており、こうした傾向は今後も続く見通しだ。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の証券事業で米金利戦略責任者を務めるマーク・カバナ氏は「企業は現金を保有することでより多くの利益を得ている」と指摘。「多くの企業は、足元の経済状況や潤沢な手元資金に満足している。それに見合ったリターンを得ているからだ」と述べた。
とりわけ突出しているのが、半導体メーカーのエヌビディアだ。1-3月の利子収入は前年同期からおよそ倍増となる3億5900万ドル(約560億円)と、6400 万ドルの金利負担を補って余りあった。また配当金9800万ドルもこれで手当てしており、S&P500種構成銘柄の中で唯一、1-3月に利子で配当金を賄うことができた企業となった。
利払いを上回る利子収入を報告した企業全体でみると、利子収入は前年同期から約60%増の69億ドルに達した。一方、利払いは5%増の28億4000万ドルにとどまった。
エヌビディアの現金保有は、人工知能(AI)チップへの需要急増を追い風に、ここ数四半期で急増している。同社の現金、現金同等物、短期投資の合計額は314億ドル超と、前年同期の153億ドルから大きく増加した。
エヌビディアはMMFに資金を投じており、保有額は1-3月に50億ドル余りに上った。報告書によると、この他、米国債や社債、CDも保有している。同社はそれ以上のコメントを控えた。
機関投資家のMMF保有額は、2022年以降およそ20%伸び、5月29日時点で約3兆6300億ドルに達した。カバナ氏によると、その大部分が企業による保有だとみられている。
原題:Nvidia Leads Companies Minting Money on Interest From Cash(抜粋)