アンスティー・クリストファー

  • 歳入を関税に頼れば経済に「下降スパイラル」が起きると指摘
  • 賃金インフレ上昇やFRBの独立性が損なわれる事態にも警鐘
Larry Summers, president emeritus and professor at Harvard University
Larry Summers, president emeritus and professor at Harvard University Photographer: Stefan Wermuth/Bloomberg

サマーズ元米財務長官は14日、トランプ前大統領が打ち出している政策案は米国と世界経済の両方に計り知れないダメージを与えるものだと非難した。ブルームバーグテレビジョンでの発言。

  所得税収の大部分を関税に置き換えるとするトランプ氏の政策案について、サマーズ氏は「スタグフレーションを生み出す処方箋だ」と指摘。「世界的な経済戦争を引き起こすことになる」とも述べた。

  トランプ氏は前日に行われた共和党下院議員との会合で、関税を引き上げ所得減税の原資の一部にする考えを示した。

トランプ氏、関税引き上げ推進と表明-所得減税原資の一部に充当へ

  歳入を関税に頼ることになれば、輸入品のコストだけでなく、輸入品と競合する商品やサービスのコストも押し上げられるとサマーズ氏は指摘。そうなれば消費者は支出を減らすことになり、経済に「下降スパイラル」が引き起こされるとの見方を示した。

  現在はハーバード大学教授でブルームバーグテレビジョンに定期的に出演するサマーズ氏は「これほどインフレを誘発するような大統領経済政策は私の人生で見たことがない」と語った。

  トランプ陣営の広報担当カロリン・リービット氏は、サマーズ氏による批判について聞かれると、「1期目のトランプ政権の経済成長政策により、住宅ローンと金利、失業率は歴史的な低水準となり、インフレはほぼ皆無だった」と主張。「米国民はトランプ政権2期目の経済政策が同じような影響を及ぼすと期待していい。労働者世帯に大きな負担を与え続けているバイデン氏のインフレ危機が終わることもだ」と述べた。

  サマーズ氏は、トランプ氏の真の政策意図が何であるのか完全には分からないとした上で、貿易保護主義とともに、ドル安を主張し、米金融当局に利下げを迫るような政策綱領は「無責任な提案」に過ぎないと批判。またトランプ氏の移民排斥姿勢についても言及し、「労働力の供給に対する制約が増す」ことで「賃金インフレ圧力が強まるだろう」と述べた。

  政治的な利下げ圧力に直面すれば、米金融当局は金利を高く維持することで政治からの独立を証明せざるを得ない状況に追い込まれる恐れもあると、サマーズ氏は指摘。「それが住宅ローン金利10%への処方箋となることも容易に考えられる」とし、「これは本当に危険なことだ」と語った。

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原題:Summers Says Trump Tax Ideas Mean ‘Mother of All Stagflations’(抜粋)