全国コアCPI、5月は+2.5% サービス価格の伸び率縮小

[東京 21日 ロイター] – 総務省が21日に発表した5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は107.5で、前年同月比2.5%上昇した。再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き上げで電気代が大きく上昇、コアCPIの伸び率は前月の2.2%を上回った。しかし、サービス価格は3カ月連続で伸び率が縮小。専門家からは、日銀が7月の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るのは「ハードルが高い」との声が出ている。

ロイターがまとめたコアCPIの民間予測2.6%上昇は下回った。

エネルギー価格は7.2%上昇と、前月の0.1%上昇からプラス幅が拡大した。電気代は14.7%上昇で、前月の1.1%下落から一転して大幅な伸びとなった。2023年1月以来の高い伸び率。都市ガス代は3.2%下落で、前月の5.9%下落から下落率が縮小した。資源価格の上昇が要因。

政府の電気・ガス価格激変緩和対策の影響で総合指数を0.48%押し下げたが、同対策は5月使用分で終了する。総務省の担当者は、6月CPIで押し下げ幅が半分となり、7月に影響がなくなるとの見通しを示した。

一方、生鮮食品を除く食料は3.2%上昇と、前月の3.5%上昇を下回った。前年同月は鶏卵やヨーグルトの値上げが押し上げ要因になっていた。生鮮食品を除く食料は9カ月連続で伸び率が縮小した。

宿泊料も14.7%上昇で、前月の18.8%上昇を下回った。前年同月は大型連休の日並びの関係で宿泊料が高めに出ていた。

コア対象522品目のうち、上昇は410、下落は78、変わらずは34。

<サービス価格、3カ月連続で伸び縮小>

生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は2.1%上昇と、前月の2.4%上昇を下回った。9カ月連続で伸び率を縮め、22年9月以来の低い伸び率となった。

財・サービス別では、財価格が3.9%上昇と前月の3.1%上昇を大きく上回る一方で、サービス価格は1.6%上昇と3カ月連続で伸び率が縮小した。今年の春季労使交渉(春闘)では高い賃上げ率が実現したが、サービス価格の上昇の広がりはまだ見られていない。

日銀の植田和男総裁は18日の参議院・財政金融委員会で、7月の金融政策決定会合までに入手可能になる経済・物価・金融情勢に関するデータや情報次第だが、「場合によっては(7月会合で)政策金利が引き上げられることも十分あり得る」と述べた もっと見る 

<7月利上げ、「ハードル高い」>

エコノミストからは「7月利上げはハードルが高い」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミスト)との指摘が出ている。

春闘での賃上げ率は5―7月ごろに毎月勤労統計に反映されるとみられるが、日銀が7月の決定会合までに確認できるのは5月分まで。物価についても、5月分ではサービス物価の十分な上昇が確認できず、7月会合の前に確認できる全国CPIは6月分までで、賃金から物価への波及を確認するには「心もとないのではないか」と話す。

酒井氏は、5月の毎月勤労統計で例えば共通事業所ベースの所定内給与が3%台後半―4%前後の伸びになるなど「サービス物価が上昇する確度が高いことを示すデータが出てこない限り、7月利上げの可能性は高くない」とみる。

その上で、夏場にかけて賃金・物価や個人消費の動向を見た上で、日銀は9月に利上げを行い、その後は来年1―3月期にもう1回、計0.5%まで利上げしてそこで打ち止めになる可能性が高いと予測している。

和田崇彦