岸田首相が表明した8~10月使用分の電気・ガス料金への補助に、政府・与党内から戸惑いの声が上がっている。物価高が続く中、首相は21日の記者会見で「即効性のある対策」として打ち出したが、補助は5月使用分で打ち切ったばかり。事前調整も十分に行われておらず、「場当たり的」との批判も出ている。
記者会見する岸田首相。電気・ガス料金の追加軽減策を表明した(21日午後、首相官邸で)=川口正峰撮影
林官房長官は24日の記者会見で、3か月間限定の補助再開について、「今夏の酷暑を乗り切るため必要があると判断した」と強調。8月分からとなる理由を「小売り事業者の事務手続きに要する期間を踏まえた」と説明した。
電気・ガス料金への補助は、ロシアのウクライナ侵略に伴う燃料価格の急騰を受けて昨年1月に始まり、段階的な縮小を経て、今年5月使用分(6月請求分)で終了した。
補助の再開は、自民党などからの要望を踏まえ、首相官邸主導で検討が進められた。首相周辺は「物価高を上回る賃上げを実現するため、今すぐにできることを考えた結果だ」と意義を訴える。19日の党首討論で、立憲民主党の泉代表が「補助の復活」を首相に提案し、「野党第1党も反対しない」との感触が得られたことも後押しになったという。
ただ、与党内の議論も行わないままの打ち出しには、唐突感は否めない。所管する経済産業省幹部の一人は、首相の記者会見当日まで知らされていなかったといい、「燃料価格は一時に比べ、落ち着いている。このタイミングで再開するのは想定外だ」と困惑を隠さない。
首相は25日に公明党の山口代表と会談し、具体的な補助の内容について、与党内の調整を開始する考えだ。秋に自民党総裁選を控える中、党内からは「総裁選に向けたバラマキだ」との反発も出ており、党内手続きで異論が相次ぐ可能性もありそうだ。