Rita Nazareth

  • 円安受け、日本当局が介入のために米国債を売却するとの見方も
  • 株は主要指数そろって上昇、エヌビディアは引け間際にプラス圏
Japanese 10,000 yen, left, and US 100 dollar banknotes arranged for a photograph in Tokyo, Japan. 
Japanese 10,000 yen, left, and US 100 dollar banknotes arranged for a photograph in Tokyo, Japan.  Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

外国為替市場で円相場は対ドルで1ドル=160円80銭台に下落。1986年以来の安値に沈んだ。円安・ドル高の進行を受けて、神田真人財務官が市場をけん制したが、発言後も円売りに歯止めがかからなかった。通貨当局による円買い介入再開への警戒感が高まっている。円は対ユーロでも下げ幅を広げ、過去最安値を更新した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1271.855.510.44%
ドル/円¥160.85¥1.150.72%
ユーロ/ドル$1.0679-$0.0035-0.33%
  米東部時間16時52分

  神田氏の発言を受けて円相場は一時160円台前半まで下げ幅を縮める場面もあったが、すぐに再び円売りが優勢になった。

為替の動きは一方向、行き過ぎた動きには必要な対応取る-神田財務官

円が下げ拡大

  神田財務官は円相場が約38年ぶりの安値を記録したことを受け、「最近の為替の動きは一方向」と述べるとともに、「行き過ぎた動きに対しては必要な対応を取る」と市場をけん制した。日本時間26日夜、同省内で記者団に語った。

  円は対ユーロでは一時1ユーロ=171円79銭に下落。1999年1月にユーロが創設されて以来の安値を更新した。

Yen Slides to Weakest Since 1986 | Dollar rally keeps FX traders on intervention alert

  円相場を大きく動かす次のイベントは、28日に発表される米個人消費支出(PCE)価格指数になるとみられる。PCEは米金融当局が重視するインフレ指標で、金利見通しに重要な鍵を握る。

  ナットアライアンス・セキュリティーズの国際債券責任者、アンドルー・ブレナー氏は「全ては米金融当局次第だ。『より高くより長く』の姿勢を背景に短期金利が極めて高い水準にとどまっており、米国に資金が流入し、ドル高が続いている」と指摘。日本にとっては「問題だ」と話した。

  BNYメロンの市場戦略・インサイツ責任者、ボブ・サベージ氏は「米金融当局が実際に緩和を実施するまで、こうした日本の取り組みが効果を発揮するとは思えない」と指摘。「大局的には、日本でのドル需要を低下させなくてはならない。日本の長期金利が十分に高くなるか、あるいは米金利が十分に低くなる必要がある。どちらも起こっていない」と述べた。

  ウェルズ・ファーゴのマクロストラテジスト、エリック・ネルソン氏(ロンドン在勤)は「ここ数日の日本の財務省当局者から発せられる言葉遣いは、懸念が増していることを示唆している」と指摘。ただし、介入には165円かそれを下回る水準まで円が下落するのを当局は待つ可能性があると述べた。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略担当グローバル責任者、ウィン・シン氏は「160円を超える円安・ドル高水準で無秩序な動きが出てくれば、変動をならすために日本の通貨当局が介入するかもしれない」とした上で、日銀が一段とタカ派に傾くまで円は売られやすい地合いが続くとの見方を示した。

  バンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリアのG10為替戦略責任者、ロベルト・コボ・ガルシア氏は「四半期末のドル需要に加え、ボラティリティー環境がなお落ち着いていることを踏まえると、日本当局はもう少し待って再び介入するだろう。もう一度介入するにはボラティリティーがさらに高まる必要がある」と述べた。

  米国債は下落。足元の円下落が債券投資家の不安を増幅させている。この日は今月の中長期債入札で最大規模となる5年債入札(発行額700億ドル)が実施され、旺盛な需要の兆候が示された。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.46%8.01.82%
米10年債利回り4.33%7.81.83%
米2年債利回り4.75%0.90.19%
  米東部時間16時52分

  10年債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.33%と、約2週間ぶりの高水準を付けた。

  円安に対する米国債の反応は、日本が通貨防衛に向け、保有米国債の一部を売却する可能性があると見方を反映している。

  ミシュラー・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、トニー・ファレン氏は、「日本は国内要因や介入を理由に、米国債を売る意欲を強めるだろう」と述べた。

  この日はオーストラリアの消費者物価指数(CPI)上昇率が市場予想を上回り、同国国債が下落。前日にはカナダでも同じことが起きていた。

  DWSインベストメント・マネジメント・アメリカズの債券責任者、ジョージ・カトランボーン氏は「不透明な政治的状況が国内外の両方で台頭しつつあることを踏まえ、相場は一息ついている」と指摘。「カナダやオーストラリアでのインフレ上振れは助けにならない」と述べた。さらに、月末が近づくとリスクテークが抑制される傾向があるなど、カレンダー要因もあると付け加えた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5477.908.600.16%
ダウ工業株30種平均39127.8015.640.04%
ナスダック総合指数17805.1687.510.49%

  S&P500種株価指数は小幅続伸。ボラティリティーの再燃に見舞われたエヌビディアは、引け際数分前にプラス圏に浮上した。同社株は荒い値動きが続いており、おおむね相場全般の方向性を左右している。

  アマゾン・ドット・コムは上昇し、時価総額は初めて2兆ドル(約320兆円)の大台を突破した。前日の引け後に強気な業績見通しを示したフェデックスは急伸。通常取引終了後の時間外取引では、マイクロン・テクノロジーが下落。業績見通しが、一部投資家の高い期待に届かなかった。

  大型株以外にも物色の裾野を広げようとする最近の動きは短命に終わっており、相場上昇の持続力に関する不透明感は強まっている。

  バーンセン・グループのデービッド・バーンセン最高投資責任者(CIO)は「株式相場は大型ハイテクに依存し過ぎている。それに尽きる」と指摘。「過去1週間のハイテク株のボラティリティーは何かもっと深刻なものの始まりなのか、そうした報いはなお迫り来るのか、まだ分からない。しかし過度な投資家センチメント、陶酔感、行き過ぎたモメンタムは常に同じ結末を迎える」と述べた。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「暑い夏に向かう中、市場の『エンジン警告灯』が点灯している」と指摘。「ハイテク銘柄中心の指数に投資する人はFOMO(取り残される不安)を抱いており、それ以外の投資家はROMO(取り残されていることへの後悔)を感じている。全体的な市場の広がりは、一握りの大型株以外は弱いままだ。S&P500種は調整がいつ起きてもおかしくないと考える」と話した。

Under the Surface | S&P 500 performance and breadth hit one of biggest dislocations in 30 years

  ニューヨーク原油先物相場は小反発。日中は前日終値を挟んでもみ合う展開となった。

  この日発表された米エネルギー情報局(EIA)の週間統計では原油在庫が359万バレル増加し、石油全体の在庫は2021年2月以来の高水準となった。ブルームバーグがまとめたアナリスト調査では減少が見込まれていた。

  在庫の増加は、夏のドライブシーズンでの需要拡大を見込んでいた強気派の予想を裏切る格好となっている。  

   トータス・キャピタル・アドバイザーズのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロブ・サメル氏は「石油市場が発しているさまざまなシグナルがレンジ取引からの脱却を難しくしている」と指摘。「夏の需要動向が分かってくるのに伴い、今後数カ月で相場の方向性も明らかになるだろう」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限は前日比7セント(0.1%未満)高の1バレル=80.90ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は24セント(0.3%)上昇し85.25ドルで引けた。

  金相場は続落。前日に米金融当局者からタカ派的な発言が出たことやドルの上昇が重しとなった。

  市場参加者の関心は、28日発表の米個人消費支出(PCE)価格指数に向かっている。米金融当局は同指数をインフレ目標の基準にしている。

  ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は17.60ドル(0.8%)下落し、2313.20ドルで終了した。

金スポット価格

原題:S&P 500 Rebounds With Nvidia Shares Turning Higher: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Slide as Weak Yen Offers Another Reason to Shun Bonds(抜粋)

Yen’s ‘One Sided’ Tumble to 1986 Low Boosts Intervention Risk(抜粋)

Yen’s Relentless Slide Showcases Fed’s Grip on Global Markets(抜粋)

Dollar Posts YTD High, Yen Hits Lowest Since 1986: Inside G-10(抜粋)

Oil Settles Little Changed After Swinging on US Stockpile Gain(抜粋)

Gold Extends Drop as Hawkish Fed Comments Damp Rate-Cut Optimism(抜粋)