Rita Nazareth
- PCE価格指数、インフレ鈍化と支出の堅調を示す
- 円は一時160円26銭に上昇後、下げに転じる
28日の米株式相場は反落。米大統領選に関するニュースに注意を払いつつ、フランス国民議会(下院)選挙第1回投票を30日に控えて慎重な姿勢が強まり、主な株価指数は下げに転じた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5460.48 | -22.39 | -0.41% |
ダウ工業株30種平均 | 39118.86 | -45.20 | -0.12% |
ナスダック総合指数 | 17732.60 | -126.08 | -0.71% |
S&P500種株価指数は一時0.7%値上がりする場面もあったが、失速。前夜に行われたバイデン大統領とトランプ前大統領の討論会を受けて、あらゆるセクター全体でポジションを調整する動きが進んだ。バイデン氏のパフォーマンスがさえなかったことで、トランプ氏返り咲きの確率が高まるとの見方が浮上した。民間の刑務所運営会社や健康保険会社などが同氏の復権で恩恵を受けるとみられている。
フランス下院選第1回投票を2日後に控え、マクロン大統領の支持率は3カ月ぶりの低水準に沈んだ。マリーヌ・ルペン氏が率いる極右政党「国民連合(RN)」は、ライバル政党の追い上げが停滞するなか、リードを広げている。
マクロン氏支持率が急低下、極右はリード拡大-仏下院選まであと2日
JPモルガン・チェースのマルコ・コラノビッチ氏はS&P500種について、今後数カ月に低迷し年末までに4200に下落すると予想。景気減速から業績見通しの下方修正に至るまで、向かい風が強まるとみている。
「米国株バリュエーションの大幅上昇と景気循環の間に明らかな断絶がある」と同氏はリポートで指摘。成長見通しが弱まりつつあることを踏まえれば、S&P500種の年初来15%上昇は正当化されないと付け加えた。
LPLファイナンシャルのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、アダム・ターンキスト氏は、歴史的に上期が好調な場合、下期のリターンも平均を上回る傾向があると指摘。「高いバリュエーションや買われ過ぎの状態、市場に広がりが見られない状況は、相場が上げ一服になる可能性を示唆しているが、季節的なトレンドは勢いが下期も続く可能性を示唆している」と述べた。
ターンキスト氏によれば、S&P500種は上期の成績がプラスの場合、下期の平均リターンは6%となっている。さらに、上期の上昇率が10%以上の場合、下期の上昇率は平均で7.7%だという。
ゴールドマン・サックス・グループのグローバル・マーケッツ部門マネジングディレクター兼タクティカルスペシャリストのスコット・ルブナー氏は、米大統領選とその余波が今年後半に市場を大きく揺るがすとみている。「7月4日以降は、エクスポージャーを今の水準から減らすことを考えるだろう」と述べた。
米国債利回りは長期債中心に上昇。米個人消費支出(PCE)価格指数の発表後は利下げ観測が強まり、利回りは低下したが、その後は上げに転じた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.56% | 13.0 | 2.93% |
米10年債利回り | 4.40% | 11.0 | 2.56% |
米2年債利回り | 4.75% | 3.9 | 0.84% |
米東部時間 | 16時55分 |
この日発表された6月の米ミシガン大学消費者マインド指数は前月から低下したが、速報値ほど落ち込まなかった。一方、1年先のインフレ期待も低下した。PCEコア価格指数は5月に伸びが鈍化した。年内利下げの論拠を補強する格好となった。
CIBCプライベート・ウェルスUSのデービッド・ドナベディアン氏は「市場の観点からすれば、この日のPCE統計はほぼ完璧だった」と指摘。「米金融当局が重視するインフレ指標はインフレが当局目標に向かって進んでいることだけでなく、景気が底堅いことも示した。消費支出は増加傾向にあり、数カ月にわたって低迷していた実質可処分所得も増えた」と話した。
モハメド・エラリアン氏は、PCEインフレ指標の伸びが5月に鈍化したことについて、金融当局による政策ミスのリスクを高めている景気減速が浮き彫りになったと述べた。英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジ学長を務める同氏は「景気は多くのエコノミストの予想よりも速いペースで減速しつつあり、米金融当局が見込んでいたよりも急速だ」と述べた。
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、PCE価格指数データは金融政策が機能していることを示しているとしながらも、いつ金利を引き下げるのが適切かを判断するのは時期尚早だと述べた。リッチモンド連銀のバーキン総裁は、インフレとの闘いでまだ勝利を収めていないと述べるとともに、失業率が低水準にとどまって資産のバリュエーションが高いままであれば、米経済は底堅さを維持する公算が大きいとの見解を表明した。
外国為替市場で円相場は対ドルで小幅安。朝方の米PCE統計発表後に一時、1ドル=160円26銭まで買われる場面もあったが、その後は下げに転じた。PCE価格指数は総合、コアともに市場予想通りだった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1269.54 | -1.82 | -0.14% |
ドル/円 | ¥160.89 | ¥0.13 | 0.08% |
ユーロ/ドル | $1.0713 | $0.0009 | 0.08% |
米東部時間 | 16時55分 |
ドルは下落。四半期末や月末のフローが重しになった。
一方で、大きな日米金利差が円を圧迫している。日本銀行は今月の金融政策決定会合で政策金利をゼロ近辺で維持。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利誘導目標の上限は5.5%となっている。
バリンジャー・グループの為替ストラテジストオ、カイル・チャップマン氏は「この巨大な金利差を埋める米金融当局のハト派転換まで、全ては円安基調における小さな動きに過ぎないようだ」と述べた。
円は対ドルで月間ベースでは2%余り下落。年初来では約12%値下がりしている。
ブリッジウォーター・アソシエーツの元最高投資ストラテジスト、レベッカ・パターソン氏は「日本に必要なのは、日銀や財務省がやることではない。実際にはドルの問題だ」と指摘。「ドルは世界の支配的通貨だ」と話した。
ヌビーンの債券戦略責任者トニー・ロドリゲス氏は米国について経済成長の鈍化と根強いインフレが混在しているとし、「米金融当局の姿勢が非常にゆっくりで、忍耐強い」ものになることを意味すると指摘。「これはドルの支えになる」と述べた
ニューヨーク原油先物相場は小反落。市場では供給増加と中東情勢悪化の両方が意識された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物はこのところ狭いレンジでの取引が続いたが、月間ベースでは約6%高となった。
需給を巡る懸念もある中、地政学的緊張の高まりが原油相場を下支えている。イスラエルはパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとの戦争を続ける一方で、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラとも全面戦争に近づきつつある。イエメンの親イラン武装組織フーシ派は紅海での商船攻撃をエスカレートさせている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前日比20セント(0.2%)安の81.54ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限はほぼ変わらずの86.41ドルで引けた。同限月はこの日が最終取引日。中心限月の9月限は0.3%安の85ドルとなった。
金相場はもみ合い。年内の米利下げを後押しするインフレ指標を消化する中、日中は方向感にやや欠ける動きとなった。金スポット価格は四半期ベースでは3四半期連続で上昇と、2020年以来の長期上昇局面となった。
金融市場で注目を集めたPCE価格指標だったが、金相場の反応は米国債相場などに比べて薄かった。金価格は従来は実質利回りと逆相関の関係にあったが、それが崩れる兆しも見えている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は3ドル(0.1%)上昇し、2339.60ドルで終了した。ニューヨーク時間午後3時37分現在、金スポット相場は0.2%安の2324.29ドル。
原題:S&P 500 Rally Hits a Wall at End of Banner Quarter: Markets Wrap(抜粋)
Dollar’s Fed-Fueled Rally Wreaks Havoc on Global FX Markets (3)(抜粋)
Dollar Ends Calm Quarter Near a Seven-Month High: Inside G-10(抜粋)
Oil Steady Below Two-Month High as Traders Weigh Mixed Outlook(抜粋)
Gold Wavers as Traders Digest US Data That Bolsters Fed Cut Case(抜粋)