Rita Nazareth
- トランプ氏が選挙勝利なら財政赤字拡大とインフレ率上昇との思惑
- 米10年債利回りが一時9bp上昇、金利差意識した円売り圧力増大
ニューヨーク外国為替市場ではドルが上昇。円相場は対ドルで一時1ドル=161円73銭まで下げ、約38年ぶりの安値を再び更新した。円安・ドル高が一段と進んだことで、政府・日本銀行による介入警戒感が高まっている。
この日は、トランプ氏のホワイトハウス返り咲きが米国の財政赤字拡大とインフレ率上昇につながるとの思惑から、米国債利回りが上昇。高水準の日米金利差を背景に、低金利の円を売って高金利のドルを買うキャリー取引の需要が根強い。
米商品先物取引委員会(CFTC)が6月28日に発表したデータによると、25日までの週にレバレッジ系ファンドの円売越高は2017年11月以来の高水準に膨らんだ。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1271.02 | 1.48 | 0.12% |
ドル/円 | ¥161.47 | ¥0.59 | 0.37% |
ユーロ/ドル | $1.0742 | $0.0029 | 0.27% |
米東部時間 | 16時39分 |
2020年大統領選の結果を覆そうとしたとしてトランプ氏が起訴された刑事事件を巡り、連邦最高裁は同氏が主張していた免責特権を部分的に認める決定を下した。これにより、11月の選挙より前に公判が開かれないことがほぼ確実となった。
米最高裁、トランプ氏の免責特権を部分的に認める-公判開始に遅れ
多くのトレーダーは、米大統領選に向けてポジションを立て始めたり、ニュースに過度に反応したりするのは時期尚早だと語っている。それでもウォール街は選挙を巡るニュースに神経をとがらせている。
バイデン氏を巡っては、米民主党全国委員会(DNC)が同氏を大統領選挙の正式候補に認定する手続きを繰り上げ、早ければ7月21日に前倒しする方向で検討していると、事情に詳しい複数の関係者が匿名で明らかにした。
バイデン氏の正式候補、米民主党が認定前倒しを検討-大統領選挙
米国債市場では10年債利回りと30年債利回りがそれぞれ、一時約9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。モルガン・スタンレーは、米統領選挙でトランプ氏勝利の可能性が高まっているため、米国債イールドカーブのスティープ化を見込む取引は有望だとの見方を示した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.63% | 7.2 | 1.58% |
米10年債利回り | 4.47% | 7.1 | 1.62% |
米2年債利回り | 4.76% | 0.4 | 0.09% |
米東部時間 | 16時39分 |
ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「債務と財政赤字の拡大が金利や政府の資金調達コストにどう影響するのかという永遠の問いがあるが、われわれは今はまさに、その影響を実感しているのではないか」と指摘。「11月の選挙で誰が勝とうと、米国の財政状況が悪化の一途をとどるというのは自明だ。現在の連邦政府支出が対国内総生産(GDP)比で23-24%と、過去のトレンドである約20%を大きく上回っている場合はなおさらだ」と述べた。
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は「先週の大統領選討論会では、持続不可能になりつつある財政赤字を削減するための政策をどちらも提案しなかった」と指摘。「一方で討論会でのバイデン氏の低調なパフォーマンスを受け、一部メディアや民主党議員からはバイデン氏に撤退を求める声も上がっており、米政治情勢は極めて不透明になっている」と語った。
米株式相場でS&P500種株価指数は小幅高。個別銘柄ではテスラが約6%上昇。市場では同社の4-6月出荷台数に注目が集まっている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5475.09 | 14.61 | 0.27% |
ダウ工業株30種平均 | 39169.52 | 50.66 | 0.13% |
ナスダック総合指数 | 17879.30 | 146.70 | 0.83% |
モルガン・スタンレーのストラテジストは、米国の選挙シーズンに向けて株式投資家は「選別的」な姿勢を保ち、より安定した利益、より強固なバランスシート、より高い利益率を持つ優良株選好を維持すべきだとの見方を示した。
マイケル・ウィルソン氏率いる同行ストラテジストは「共和党が勝利するシナリオでは、移民制度改革と関税の影響もあり、成長リスクはダウンサイドに偏っている」と指摘。財政の持続可能性やインフレにも焦点が当たる中、このような力学は「相対的に質が低くシクリカルな銘柄や小型株に逆風となる可能性が高い」と記した。
ニューヨーク原油先物相場は反発し、約2カ月ぶりの高値に達した。欧州と中東での地政学的リスク増大やカリブ海へのハリケーン襲来が意識された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)はバレル当たり83ドルを上回って終了。先週の狭いレンジを抜け出して4月以来の高値を付けた。北海ブレントも86ドル超と、同じく約2カ月ぶりの高値。
強力なハリケーン「ベリル」は勢力を増しながらカリブ海を進んでいる。専門家は米国のメキシコ湾岸での石油操業に打撃を与える可能性は低いと指摘しているが、週内に混乱が生じる恐れは依然としてある。
ハリケーン「ベリル」、再び勢力強める-カリブ海グレナダに接近 (1)
1年のまだ早い時期にこれほどの規模のハリケーンが襲来するということは、今回のハリケーンシーズンの厳しさを示唆している可能性がある。
イスラエルのネタニヤフ首相は、イスラム組織ハマスの壊滅まで戦うと表明。イスラエル北部のゴラン高原では6月30日、無人機の攻撃を受け兵士18人が負傷したと、イスラエル国防軍が声明で明らかにした。フランス国民議会(下院)選の第1回投票では、マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党「国民連合(RN)」が優勢となり、政治的リスクが高まった。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前週末比1.84ドル(2.3%)高の1バレル=83.38ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は1.60ドル(1.9%)高の86.60ドルで引けた。
金相場はほぼ変わらず。週内には米経済指標が多数発表され、広く予想されている利下げの時期に関する手掛かりが得られるのではないかと、市場関係者は期待している。金利低下は通常、利子の付かない金への支援材料となる。
金スポット相場は四半期ベースで、4-6月(第2四半期)まで3四半期連続の上昇を記録。2020年以来の長期上昇局面となった。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時22分現在、前週末比1.02ドル高の1オンス=2327.77ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は70セント安の2338.90ドルで終了した。
原題:Treasuries Get Hit as US Election Risks in Focus: Markets Wrap(抜粋)
原題:Treasuries Hit as Traders Weigh US Election Risks: Markets Wrap(抜粋)
原題:Dollar Tracks Yields Higher as Voters Churn Markets: Inside G-10(抜粋)
原題:Oil Hits Fresh 2-Month High on Geopolitical, Hurricane Risks(抜粋)
原題:Gold Holds Steady as Attention Turns to Looming US Economic Data(抜粋)