By Matthias Williams, Kate Abnett
[ロンドン/ブリュッセル 8日 ロイター] – フランス国民議会(下院)総選挙は、第一回投票で快進撃したマリーヌ・ルペン氏の極右政党「国民連合(RN)」が7日の決選投票ではまさかの失速。欧州で右派伸長のうねりを懸念していた国からは安堵(あんど)の声が聞かれた。ただ大統領と政府与党の政党が異なる「コアビタシオン」となり、フランス政局は新たな不安定期を迎える。 もっと見る
今回の選挙について、特にウクライナの支援国は、RNの対ロシア政策によりウクライナへの軍事援助が縮小されることを危惧していた。
ポーランドのトゥスク首相は「パリでは熱狂、モスクワでは失望、キーウ(キエフ)では安堵。ワルシャワでは喜ぶに十分だ」とXに投稿し、選挙結果を歓迎した。
ドイツのショルツ首相は、フランスのマクロン大統領がRNを率いるマリーヌ・ルペン氏に配慮する必要がなくなったことに「安堵している」と指摘。
ドイツのハーベック副首相も記者団に「何はともあれ右派の圧勝がなかったことに非常に安堵している」と述べ、「国家主義に傾き、欧州がさらに困難な状況に陥る」のが食い止められたと称賛した。
その上で「選挙結果は、フランスにとって、そして欧州議会選挙後の再編段階にある欧州、ドイツとフランスの関係にとっても非常に大きな課題となるだろう」と指摘した。
スペインのアルバレス外相は、「欧州の価値観に完全に反する」極右の敗北を嬉しく思うと国内ラジオで語った。
ギリシャの政党、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のアンドロウラキス党首は、フランス国民が「極右、人種差別、不寛容に対して壁を築き、フランスの不朽の原則である自由、平等、友愛を守った」と述べた。
一方、ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は、ロシアはフランスの新政権樹立を大きな関心を持って見守っているとした上で「両国関係の修復に向けた取り組みを支持する政治勢力の勝利は間違いなくロシアにとって良いことだが、今のところ、そのような輝かしい政治的意志を持つ者は誰も見当たらない。したがって、この点に関してわれわれは特別な希望や幻想を抱いていない」とした。
スターマー英新首相の報道官は、フランスは英国の最も緊密なパートナーの1つとし、いかなる政府とも協力すると述べた。
<前途多難>
決選投票の結果、下院は左派が最大勢力となり、次いでマクロン大統領の中道、極右の3つの勢力に分かれた。それぞれが異なる政策を掲げ、国内政策のとりまとめが難しくなるほか、EUにおける発言力や調整能力の低下が懸念される。
フランスは、財政赤字がすでにEUの財政規律違反状態だが、左派は燃料や食品など生活必需品の価格の上限設定、最低賃金の引き上げなどを目指す。
イタリアの右派「同盟」のクラウディオ・ボルギ上院議員は「さらば欧州財政赤字制限!(政府は)すぐに崩壊するだろう」などと述べた。
ポルトガルの極右シェガ(Chega)党のベンチュラ党首は、選挙結果を「経済にとっては大惨事、移民にとっては悲劇、汚職との戦いにとっても悪影響」と指摘した。
キャピタル・エコノミクスは、今回の選挙について、ルペン氏か左派のどちらかが単独過半数を占めるという投資家にとって「最悪の結果」は回避したと指摘。
しかし、過半数を占める政党がない宙づり議会(ハング・パーラメント)では、EUの財政規律順守に向けた予算を通過させるのは困難で、財政規律を巡りEUと衝突する可能性も高まったとした。