Christopher Condon
- 第2四半期終盤に個人消費は持ち直し-ここ数か月の減速傾向に逆行
- サイバー攻撃の影響で自動車販売が減少-売上高全体を下押し
6月の米小売売上高は、自動車ディーラーへのサイバー攻撃の影響を除くベースで堅調な伸びを示し、4-6月(第2四半期)終盤に個人消費が底堅さを維持したことを示唆した。
自動車を除く小売売上高(インフレ調整前)は前月比0.4%増と、伸びは市場予想の0.1%増を上回った。前月分も速報値の0.1%減から0.1%増に上方修正された。
全体では横ばいとなったが、自動車ディーラーの売上高が2%減少したことが下押し要因となった。
キーポイント |
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・米小売売上高は前月比横ばい ・市場予想は0.3%減 ・前月は0.3%増(速報値は0.1%増)に上方修正 ・データはインフレ調整を加えていない |
ここ数カ月は高金利と労働市場の冷え込みを受けて個人消費が緩やかな減速の兆候を示していたが、今回のデータはこれに逆行する格好となった。米利下げ開始が近づきつつあるとみられる中、米経済の原動力である個人消費がなお持ちこたえている様子を示した。
13項目のうち、減少したのは3項目にとどまった。マイナスとなった項目にはガソリン販売が含まれており、これは6月にガソリン価格が下がったことを反映している。スポーツ・書籍・趣味用品も減少した。
全米のディーラーにソフトウエアを提供しているCDKグローバルが6月中旬にサイバー攻撃を受け、多くのディーラーで自動車販売に影響が出た。
全米自動車ディーラーでサービス停止-ソフト会社にサイバー攻撃 (2)
自動車メーカーやディーラーは、今回のハッキングによる影響は販売の繰り越しにとどまり、商機が完全に失われるまでには至らなかったと述べている。そのため、業界関係者が7月の回復を見込んでいることがうかがわれる。
国内総生産(GDP)の算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建設資材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高は0.9%増加。伸びは2023年4月以来の大きさに一致した。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏は「消費と経済活動は年初から減速傾向を著しく強めた。しかし、リセッション(景気後退)を招くと考えられる水準まで状況が悪化しているわけでは全くない」とリポートで指摘。「消費と成長に関するデータ、およびインフレ抑制の進展を示す指標も合わせ、金融政策スタンスの緩和を後押しする」と述べた。
自動車・ガソリンを除く小売売上高は0.8%増と、2023年初期以来の大幅増となった。無店舗小売は3月以来の高い伸びとなり、全体を押し上げた。健康用品は昨年10月以来、建設資材は2月以来のそれぞれ大幅増となった。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、エステル・オウ氏は「消費者は6月、財価格の下落に便乗してこのところ慎重だった項目に支出を振り向けた。だが、財への支出は持ち直したものの、飲食店での裁量的サービスへの支出はなお抑制したままだ」と述べた。
小売売上高は、個人消費全体に占める割合が比較的小さい財の購入を総じて反映している。11日発表された労働省労働統計局(BLS)のデータによると、6月の財価格は2カ月連続で0.4%下落した。
月内に発表される個人消費支出(PCE)データから、インフレ調整後の財・サービス支出に関する一段の詳細が明らかになるだろう。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Retail Sales Excluding Autos Rise by Most in Three Months(抜粋)