▽トランプ氏、指名受諾演説で暗殺未遂語る 当初の融和色は雲散霧消<ロイター日本語版>2024年7月19日午後 3:09 GMT+9

By Nathan Layne , Joseph AxJeff Mason

[ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)/リホボスビーチ(米デラウェア州) 18日 ロイター] – 米共和党の大統領候補に指名されたトランプ前大統領は18日に共和党全国大会で指名受諾演説を行い、自身が負傷した暗殺未遂事件について語り、「全能の神のご加護」のおかげでこの場にいると強調した。

13日の事件後に演説するのは初めて。「何かが飛ぶ大きな音がして右耳に強い打撃を受けた。銃弾に違いないと思った」と死を免れた状況について話した。聴衆は熱狂した様子で、トランプ氏が「私はここにいるはずではなかった」と語ると「あなたはここにいるべきだ」と叫んだ。

血を流した自身の写真が背後のスクリーンに映し出される中、トランプ氏は現場でそばに駆けつけてくれたシークレットサービスの警護官を称賛し、死亡したボランティア消防士のコリー・コンペラトーレさんを追悼して彼の消防ヘルメットにキスをした。

15日に開幕した共和党大会では参加者が異口同音にトランプ氏を称賛し、同氏の下で党の結束がかつてないほど強まっていることを印象づけた。

トランプ氏は演説の冒頭でいつもの攻撃的な姿勢を抑え、融和色を前面に出した。「私は米国の半分ではなく国全体の大統領になるために立候補している。半分のために勝利してもそれは勝利ではない」と訴えた。

ただ、その後はいつもの激しい口調で、国を「破壊」しているとしてバイデン現政権を批判。自身が起訴されているのは民主党の陰謀の一環だと根拠なく主張し、民主党のバイデン大統領が「第3次世界大戦」を引き起こすとしたほか、南部国境を移民が越えてくることを「侵略」だと表現した。

トランプ氏、暗殺未遂語るのは「つら過ぎる」 指名受諾演説抜粋

<大会史上最長>

演説は90分以上に及び、大会史上最長の演説となった。当初の融和色は雲散霧消し、いつものように大げさな表現と不平不満を織り交ぜ、民主党が2020年の大統領選を盗んだという虚偽主張を繰り返した。

また、自分だけがこの国を確実な破滅から救うことができると主張。「私なら電話一本で戦争を止めることができる」と語った。

トランプ氏の演説が終わると、天井から風船が落ちる中、同氏の家族と副大統領候補に指名されたJ・D・バンス上院議員がステージに上がった。選挙戦ではめったに姿を見せないトランプ氏の妻メラニアさんも18日に今週初めて同氏に寄り添った。

バンス氏は年齢がトランプ氏の半分となる39歳で、トランプ氏の「アメリカを偉大にする運動(Make America Great Movement)」のイデオロギー的後継者と広く見られている。

トランプ氏はバンス氏に「J・D、君はこれを長く続けることになる」、「楽しんでくれ」と声をかけた。

トランプ氏が求心力を高める一方で、バイデン大統領は11月の大統領選からの撤退を求める声を真摯に受け止めており、複数の民主党関係者はバイデン氏による候補辞退は時間の問題と考えているという。事情に詳しい複数の関係筋が匿名で明らかにした。 もっと見る

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▽焦点:トランプ氏演説、党のイメージ刷新努力台無し 結局いつもの悪口に<ロイター日本語版>2024年7月19日午後 6:29 GMT+9

米共和副大統領候補バンス氏が指名受諾、「労働者に尽くす」

[ミルウォーキー 17日 ロイター] – 米ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催中の共和党全国大会で17日、副大統領候補に正式指名されたJ・D・バンス上院議員(39)が指名受諾演説し、11月の選挙で勝利した場合には労働者階級のために尽くすと強調した。

バンス氏は自身について、ワシントンの支配層に忘れ去られたオハイオ州の工業都市で生まれ、困難な環境で育ったと紹介。バイデン大統領のような「職業政治家」が貿易政策や対外戦争で失敗し、地方都市を破壊してきたと非難した。

「トランプ大統領のビジョンはとてもシンプルかつ力強い。ウォール街のご機嫌取りはもうやめよう。われわれは労働者にコミットする」と語った。

大統領選の行方を左右する可能性が高い「ラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれるミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの3州の労働者階級や中産階級にもアピールした。

また対外政策では、中国からの輸入品よりも国内製造業を優先させると約束し、同盟国には世界平和の確保でもはや「ただ乗り」はできないと警告するなど、トランプ主義の中核を含む演説だった。

バンス氏はウクライナへの軍事支援に反対し、2020年大統領選での敗北を覆そうとしたトランプ氏の試みを支持してきた。また、政府は輸入制限や最低賃金引き上げなどを通じて労働者階級支援に一層取り組むべきと主張している。こうした立場は共和党の伝統的な親ビジネス路線と相反するが、トランプ氏が掲げる政策には沿っている。

当初はトランプ氏を激しく非難していたバンス氏は、いまや主要政党初のミレニアル世代の副大統領候補としてトランプ氏の「MAGA(米国を再び偉大に)」運動を将来的に引き継ぐ立場にある。

すでに大統領候補に正式指名されたトランプ氏はこの日も負傷した右耳にガーゼを付けて会場に現れ、歓声を浴びた。

▽バンス氏は「労働者階級の男」、妻ウーシャさんが共和大会で登壇<ロイター日本語版>2024年7月18日午後 2:46 GMT+92

バンス氏は「労働者階級の男」、妻ウーシャさんが共和大会で登壇

[ミルウォーキー 17日 ロイター] – 米共和党の副大統領候補に正式指名されたJ・D・バンス上院議員(39)の妻ウーシャさん(38)が党全国大会で登壇し、自身の夫をアピールした。

バンス氏について、幼少期のトラウマを乗り越えてエール大学ロースクールに通った「労働者階級の男」と表現。「イラクに従軍したタフな海兵隊員だが、子犬と遊んだり映画『ベイブ』を見たりするのが好きな時間だった」と紹介した。

サンディエゴの中流階級で育った自分と、アパラチア地方の貧困家庭出身のバンス氏に触れ、「J・Dと私が出会えたこと、ましてや恋に落ちて結婚できたことはこの国が偉大である証し」と述べた。

エール大学とケンブリッジ大学で学位を取得した弁護士であるウーシャさんは、ロバーツ連邦最高裁長官のロークラークとして判例の調査や判決文の草稿作成を手伝った経験もある。選挙期間中に家族をサポートするため、所属する法律事務所「マンガー・トールズ&オルソン」を退所することを15日に発表した。

夫妻はエール大ロースクールで出会い、2013年に卒業。夫妻には3人の子どもがいる。

インド系移民の娘であるウーシャさんは15日にバンス氏の副大統領候補選出が発表されて以来、ソーシャルメディアXで人種差別的な攻撃の標的となっている。

極右ネットタレントのステュー・ピーターズ氏は夫妻の写真を投稿し、「明らかなインド人のクーデターがまさに目の前で米国で起きている」と書き込んだ。

ウーシャさんは6月のテレビインタビューで、自身は信心深い宗教的な家庭で育てられたと語った。両親はヒンズー教徒だ。

一方、バンス氏は17日の党全国大会で妻を「信じられないほど素晴らしい弁護士であり、より良い母親」と表現した。