• 利下げを支持した委員の一部は「微妙なバランス」で判断
  • 利下げが速過ぎたり大幅過ぎたりしないよう注意する必要ある-総裁

イングランド銀行(英中央銀行)は1日、政策金利を5.00%に引き下げると発表した。利下げは2020年序盤以来だった。中銀は慎重に緩和を続ける方針を示唆した。

  議事要旨によれば、金融政策委員会(MPC)メンバーの5人が0.25ポイント利下げを支持、4人が据え置きを主張した。利下げを支持した委員の一部は「微妙なバランス」で判断したという。

  決定発表後にポンドは対ドルの下げを縮め、英国債は上昇を維持した。ポンドは0.5%安の1.2791ドルで取引され、10年物英国債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。

  トレーダーは年内の追加緩和予想を強め、12月までに約35bpの利下げを織り込んだ。

  中銀は金利がどこに落ち着くか、またそこに到達するまでの利下げのスピードについて、具体的なガイダンスは示さなかった。当局は今後の会合の各回で、状況を検証し事実に対応するとベイリー総裁が述べた。

  総裁は記者会見で「今後の金利動向について個人的な見方を述べることはしない。常にそうであるように、会合ごとに決定する」と述べた。「十分に自信を深めており、景気抑制の度合いを少し減らすことができると考えている」と語った。

  声明で総裁は、世界の他の主要中銀と同様に慎重な姿勢を示し、英中銀は政策緩和を急ぐ必要はないと強調した。

  「インフレ圧力は十分に緩和されため、本日利下げを行うことができた。しかし、インフレが確実に低水準にとどまり、利下げが速過ぎたり大幅過ぎたりしないよう注意する必要がある」とくぎを刺した。

  議事要旨も「金融政策による景気抑制の適切な度合いを各会合で決定する」として、慎重なアプローチを示唆した。

  それでも英中銀の予測は、向こう3年間に市場が現在見込む以上の急激な利下げが行われる可能性を示唆する。金利が来年に4.1%、3年後に3.5%に低下するという市場予想を前提とすると、インフレ率は2年後に1.7%、3年後に1.5%になると中銀は予測。これは目標の2%を大きく下回る。

  英国のインフレ率は望ましい水準に戻ったが、基調的な物価の上昇圧力は引き続き不快なほど高いと中銀は指摘。総合インフレ率は年末までに2.7%まで上昇し、それ以降は賃金とサービス価格の動向次第だとの見解を示した。

  インフレリスクは「予測対象期間を通じて上方向に傾いている」とした上で、「インフレ率が中期的に2%の目標に戻ることへのリスクが一段と解消されるまで、十分に長い期間にわたって景気抑制的な金融政策を続ける必要がある」と表明した。

  MPCは基調的なインフレが予想より根強く、成長率も予想以上であるにもかかわらず、利下げを決定した。利下げに反対票を投じた少数派メンバーは、この2つの要因を挙げた。今回のMPC採決は23年9月以降で最も拮抗(きっこう)したものとなった。

  議事要旨によると、利下げに賛成した5人は「インフレが持続するリスクの緩和に一定の進展があった」との考えだった。ただ、このうちの一部委員にとってインフレの根強さは「まだ決定的には解消されていない」ため、今回の決定は「微妙なバランス」に基づくものだったという。

  ベイリー総裁と並んで、ロンバルデリ新副総裁(金融政策担当)も初会合で引き下げを支持。ブリーデン副総裁、ラムスデン副総裁、外部政策委員のディングラ氏が利下げに賛成した。

  チーフエコノミストのピル氏、外部政策委員のハスケル、グリーン、マンの3氏は据え置きを望んだ。ハスケル氏は今回の会合が最後。前回の6月会合で利下げを支持したのは2人だけだった。

原題:BOE Cuts Rates in 5-4 Vote and Offers No Timing on Next Move (2)(抜粋)